捏造は「愚か者には見えない衣装」
―冤罪事件における検察と裁判所の関係―
全ては捏造だった
1966年6月に静岡県で一家4人が殺害された「袴田事件」をめぐり、元
プロボクサー袴田巖さん(84歳)の公判で一審・静岡地裁の主任裁判官だった熊本典道(のりみち)さんが11月11日、福岡市の病院で死去した。83歳
だった。退官後の2007年に「私は無罪を主張したが2対1で有罪に決まった」と死刑判決の内幕を告白していた。(袴田事件で「無罪を主張した」裁判官、熊本典道さんが逝去 刑事弁護OASIS 2020/12/09)
静岡県一家4人殺害事件で死刑となった袴田巌さん(88)の再審無罪が9日確定する。司法の呪縛から解き放たれるまでに58年。判決は「3つの証拠」を捏造(ねつぞう)と認定し、8日の検事総長談話は「強い不満」を表明したが捜査の検証は避けられない。取り調べが問題になるケースは近年も繰り返され、冤罪(えんざい)から学ぶ姿勢が求められる。(袴田さん無罪で残る「3つの捏造」 捜査検証避けられず 日本経済新聞 2024年10月9日)
この事件では捜査機関(警察・検察)が有罪の証拠を「捏造」していた。「疑わしきは被告人の利益に」の大原則を捨て去り、捏造を見逃し、「疑わしきは検察の利益に」を実践し続けた裁判官たちの責任は限りなく重い。(里見繁 〈袴田事件〉日本の裁判史上、初めて使われた「捏造」の文字…弁護人までもが長年、この言葉を忌避し続けた理由 集英社オンライン 2024/12/30)
詐欺師=検察と王様=裁判長の関係(詐欺師の図はクリックして拡大)
袴田事件の検察と裁判官の関係は、アンデルセン童話「裸の王様」に出てくる詐欺師と王様の関係で概ね説明できるが、原作と袴田事件では大きく異なる部分もある。
原作では子どもの率直な指摘により、市民も王様も「愚か者には見えない衣装」から速やかに覚醒したのに対し、袴田事件では;
●捏造の賞味期限の長さ:詐欺師=検察と王様=裁判所の双方が代替わりを繰り返し、58年間も冤罪が維持された。
●市民・メディアの無関心:その間に検察の捏造、冤罪の維持についてメディアも市民は全く無関心になってしまった。
以上の2点は、やはり検察による捏造が行われた北陵クリニック事件第二次請求審でも最大の争点となる。これからは、袴田事件との比較によって、北陵クリニック事件に特徴的な冤罪の構造を解明していくことにする。
→犯罪自体が捏造だった―北陵クリニック事件の特殊性―
→根崎判事を騙した後藤医師の嘘 その1
→根崎判事を騙した後藤医師の嘘 その2
→最高裁事務総局による裁判官支配の動かぬ証拠
→北陵クリニック事件第一次請求審関連記事一覧
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