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2010年11月4日
平成22年度前期 産業歯科保健部会研修会(第83回日本産業衛生学会 産業歯科保健部会・産業栄養研究会合同研修会)の記録


2010年5月27日(木曜)に、福井県のフェニックス・プラザで行われた第83回日本産業衛生学会において、「微量元素等が口腔および消化器に及ぼす影響」をテーマに、産業歯科保健部会及び産業栄養研究会が初めて合同で主催した研修会が開催され、参加者は64名であった。

座長の松木一美先生(日本歯科衛生士会)、尾崎哲則先生(日本大学)による司会・進行のもと、産業栄養研究会の柳澤裕之先生(東京慈恵会医科大学)及び当部会員の品田佳世子先生(東京医科歯科大)による講義の概要と質疑応答について報告する。

柳澤裕之先生(東京慈恵会医科大学)は「微量元素、特に亜鉛と口腔/消化器疾患」のタイトルで、最初に、多量元素(O・C・H・Nなど:体の構成に必要な主要元素)、準主要元素(Na・K・Clなど:電解質機能を有する)、微量元素(Zn・Cu・Cr・I・Co・Se・Mn・Mo・Feの9元素:量的には鉄より少ない含有量の元素で、通常1ppm以下)について解説された。
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鉄・亜鉛・クロム・銅は、日本人が欠乏している元素で、特に亜鉛は、生活習慣病と老化に影響を及ぼし、一部の口腔疾患や消化器疾患に欠乏が深く関わっている。最近、舌炎、舌痛、口唇炎、味覚異常などの口腔疾患や一部の食道疾患で亜鉛の補充療法の有効性が認められている。亜鉛は創傷の治癒にも関係し、特に注目すべきは褥創で、亜鉛の投与による顕著に改善された症例が示された。

「産業保健の立場で、生活習慣病予防やメンタルヘルスの観点から、一次予防として亜鉛をサプリメントで摂取することについてはどうか。」との質問に対し、「極端に偏った食生活でなければサプリの必要はない。加熱調理のため、微量元素やビタミンも大幅に減少している。加工食品の大量摂取は熱の面と、添加物でかなり減っている。この場合は亜鉛だけでなく他のミネラルやビタミンのサプリメントの摂取が必要な場合もある。」と回答され、その他、活発な質疑応答がなされた。

品田佳世子先生(東京医科歯科大学)は「微量元素等が口腔に及ぼす影響」のタイトルで、最初に、歯科の中で最も重要な元素であるフッ素について解説した。フッ化物はう蝕(むし歯)予防として、世界中で長い間、応用され、明らかな効果を示してきた。現在、日本ではフッ化物配合歯磨剤、フッ化物洗口法、フッ化物歯面塗布などがう蝕予防に応用されているが、世界的にはフロリデーションが行われている。子供だけでなく職域でもむし歯対策が必要であるため、フッ化物の応用を活用すべきである。歯周病と微量元素やビタミン等についての症例報告はみられるが、疫学研究など科学的に証明された論文は少ない。
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近年の食生活の変化に伴い、若年者の味覚低下が危惧されており、味覚障害と亜鉛、鉄、銅との関連や食生活(野菜を食べない、カップめんを頻回に食べる、スポーツドリンクをよく飲むなど)との関連が報告されている。

しかし、まだ解明されていない部分が多く、今後、歯科と栄養の専門家の共同研究が期待される。「添加物が亜鉛欠乏になるのであれば、現在、品目を中心に食のアンケートに取り組んでいるが、カップめん摂取なども項目に入れるべきか」との質問に「カップめんと菓子類は亜鉛を欠乏させる可能性が大きい」と回答され、その他、活発な質疑応答が行われた。

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