日本産業衛生学会 産業歯科保健部会
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2008年6月23日
2008年3月22日に開催された
産業歯科保健部会・ 関東産業歯科保健部会
合同研修会の記録

第1回 産業歯科保健部会・関東産業歯科保健部会 合同研修会

 2008年3月22日(土曜)、東京医科歯科大学・特別講堂において研修会が開催され、51名が参加した。
 テーマ:「特定健診・特定保健指導と口腔保健」
 座長: 森 智恵子 (日立製作所)
     藤田雄三  (神戸製鋼)
 講演: 
   1)「特定健診・特定保健指導と今後の保険者機能を職域口腔保健から考える」
    日本大学歯学部 医療人間科学 教授
    尾崎 哲則
   2)忙しい人のためのメタボリックシンドローム撃退作戦
    株式会社日立製作所・日立健康管理センタ放射線診断科主任医長
    中川 徹

 尾崎先生のご講演では、特定健診・特定保健指導の背景や実施方法についての基本的な事項に加え、従来の早期発見・早期治療といった歯科疾患指向型の口腔保健活動を脱却し、メタボリックシンドロームと関連のある口腔保健、そして、QOLの面からのアプローチの必要性について、そして行動変容(歯科保健にかぎらず「食」全般に関して)に能力を発揮できる人材として歯科衛生士のさらなる積極的な活用について提案がなされた。
 中川先生のご講演では日立健康管理センタで行われている、内臓脂肪減量を目的とした「はらすまダイエット」の具体的な支援方法が紹介された。自己決定理論をベースに、体重計・歩数計・はらすまファイル(記録帳)を使って、PDCAサイクルでダイエット評価していく方法で、1日に必要なカロリー減目標の参考となるカードをめやすに、体重や簡単なメモで記録をとることで、変化・効果に気づきを起させ、無理せず、気楽に、楽しく、「がんばり過ぎない、でもあきらめない」はらすまダイエット法についてわかりやすくご説明いただいた。
 タイムリーなテーマで、今後の産業歯科保健活動のあり方を考えるよい機会であったとともに、メタボ対策は自分自身にもあてはまった実践方法でもあったので、フロアからも活発な質疑応答があった。
 当日の参加者は51名と盛会でした。
 また研究会終了後、会場を学内レストラン「メディコ」に移し、懇親会を開いた。アルコールも手伝って、非常に活発な情報交換が行われ、交流をはかることができた。





事後抄録

1.特定健診・特定保健指導と今後の保険者機能を職域口腔保健から考える

 日本大学歯学部
 医療人間科学 教授
 尾崎哲則

 今年の4月から、高齢者の医療の確保に関する法律(以下、高齢者医療法とする)が老人保健法に変わり施行される。これにより、40歳以上の従業員の健康診査が、労働安全衛生法のみならず、高齢者医療法の特定健診・特定保健指導の規定を受けることになる。
 ところで、特定とは何を意味するのであろうか?特定というのは、内臓脂肪症候群、いわゆるメタボリックシンドロームをさす。そのため、この法律に基づき、それ以外を指さないのである。ということは、この状況以外は対象にしないものである。それが、死因の1位である悪性新生物であろうが、職域保健で大きな問題であるメンタルヘルスであろうが、いわんや歯科保健でもある。
 これは、医療費の増大から考えていったとき、終末期の医療費を高める可能性のある寝たきりあるいは、それに近い状況をつくる可能性の高い疾患の原因がメタボリックシンドロームあり、場合によっては予防も可能であるということによるものである。そして、この健診の目的は、疾病の発見ではなく、階層分けと抽出であり、いわゆるスクリーニングである。そして、その結果をもとにそれぞれの階層に対応した保健指導(健康支援)を行うということである。しかも、この事業の実施者は、医療保険制度の保険者というところが、ミソである。目的は医療費削減である。糖尿病抑制もこの一つである。
 さて、このような状況下で、口腔保健はどのような展開が要求されるのであろうか?従来型の歯科疾患指向型では、前述のように極めて厳しい状況である。そこで、求められるのは、メタボリックシンドロームと関連のある口腔保健状況からのアプローチであろう。その一つは、現在、日本歯科医師会が努力している「糖尿病と歯周疾患」のアプローチであろう。歯科疾患の検出ではなく全身特にメタボリックシンドロームへの健康支援であろう。今年になって、歯科関係者が特定保健指導の指導者として容認されたが、この研修は歯科医療関係者向けにはされていない。
 しかし、「糖尿病の人は歯科でも診てもらってください。」と言われるように、口は口で終わる時代でない現在において、保険者は、口腔のもつ意義・全身の健康との関連性を見据え、医療費の面だけでなく、被保険者のQOLの面からも口腔保健を積極的に実施していく必要があろう。


2.忙しい人のためのメタボリックシンドローム撃退作戦
 株式会社日立製作所・日立健康管理センタ
 放射線診断科主任医長
 中川 徹

 2008年4月から高齢者医療確保法に基づき保険者に義務付けられる「特定健診・特定保健指導」が開始された。40歳〜74歳までの被保険者が、腹囲測定・血圧・血糖・脂質を含む健康診断を受診し、動脈硬化性疾患にリスクに応じて保健指導を受ける。一番リスクの高い群は「積極的支援」という3〜6ヵ月間の内臓脂肪減量プログラムで減量に取り組むことになった。日立製作所グループでは、"はらすまダイエット"という安全・確実・効果てきめんなプログラムを採用する。はらすまダイエットの原則は「無理なことはやらない。がんばらない、けれども簡単にはあきらめない。」ということある。
 ちなみに"はらすま"とは、Hitachi Associates Life Style Modification & Action Dietを略したもの(HALSMA)である。日立(Hitachi)の仲間(Associates)が集って、内臓脂肪を撃退するために、これまでの習慣(Life Style)を見直し(Modification)、実際に行動(Action)をおこそうというものである。
 忙しく働くひとにとって最小限の工夫で最大効果を上げたいが、実際に解決策に画一的なものなど存在しない。個人で一番フィットする作戦を編み出すほかない。日常のわずかな工夫が、体重の減量に反映することを、90日という余裕の期間で、自分自身で体験いただき、安全・確実・効果てきめてきめんで、無理のない、賢い内臓脂肪撃退作戦を練っていただく提案をおこなっている。
 はらすまダイエットのポイントは以下の通りである。
  @現在の体重の5%を減量目標
  A3ヵ月(90日間)かけて減量1日の減量目標は50g〜100g
  B100g体重計で朝晩2回体重をチェック
  C必ず紙に記録しておく
  D体重が増えたときは言い訳を記入
  Eがんばらない、無理なことはやらない
  F目標達成時には自分へのごほうびを決めておく
 本邦のメタボ診断基準により、30歳〜40歳台のメタボ診断確定者104名に対し、内臓脂肪減量の重要性および体重減量プログラム内容を説明した。同意の得られた53名が90日のはらすまダイエットに取り組んだ。
 評価項目は、介入前と90日後の身体計測・血圧・血液検査(一般生化学およびアディポネクチン・small dense LDL・アポA1・アポB)・空腹時インスリン・内臓脂肪CT検査・血圧脈波速度である。
 90日後に、メタボ解除を確認する検査を終了した51名の結果は、メタボ解除32名(62.7%)、解除あと一歩11名(21.6%)、解除失敗8名(15.7%)であった。
「はらすまダイエット」の実際
 計画:体重の5%減量を目標。1日50〜100減量(50gの脂肪は、350kcalの算段でなんとか消滅できる理屈)90日間の実施。
 実行:100kcalカードを使って一番あなたにフィットしたカードを選択する。(200枚作成)3枚選択する。(無い場合は相談して作成する。)
 評価:原則1日2回100g表示の体脂肪計で体重測定・記録を行います。
 改善:10日おきに短期目標チェックする。次の短期目標にするか、現在の目標達成まで後10日がんばるかまたは、計画、実行を見直すかを相談する。
はらすまダイエットの三種の神器
 @体重計(100g単位)、A万歩計、Bはらすまファイル(記録帳)

 なお研修会の抄録は大島 晃先生(新日本製鐵(株)君津製鐵所 歯科診療所)の記録を参考に作成させていただきました。


懇親会の写真

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