ガリレオを気取る私
ーそして科学捜査のスターを抱えて芸能事務所を気取る最高検・最高裁ー

検察無謬信仰や裁判真理教という天動説を否定し,「医師と同様に検察官も裁判官も間違える.その間違いから学んでこそ,検察官として,裁判官として成長し,裁判の品質を向上させ,自分たちを養ってくれている国民の皆様の期待に応えられる」.

そう主張する私が,現代のガリレオ・ガリレイを気取っても,誰も文句は言ってこない.異端審問もなければ,幽閉されることもない.確かに刑務所には入るが,週に一日水曜だけで,朝8時に刑務所に入って,17時きっかりに出てくる.水曜日は定時退庁日であり,ワーク・ライフバランスを大切にする法務省職員の一人として残業しないように心がけているからだ.北陵クリニック事件の再審請求審でも,一度も審問の呼び出しがかからなかった.それは現在行われている即時抗告審でも全く同じことで,どういうわけか検察官も裁判官も私を審問しようとしないのだ.

まさか脈の取り方一つ知らないのに,神経内科専門医であり,同じ法務省職員であり,矯正医官である私を藪医者呼ばわりしていることに後ろめたさを感じるようなナイーブさを持っているわけではあるまいに.裁判所・検察・警察に共通する空虚な威信を消滅させる力をドクターGである私が持っていると思えるような,豊かな想像力を持っているわけではあるまいに.

日本では実に6割の人が検察無謬信仰や裁判真理教という天動説を信じている.日本における各組織・制度に対する信頼度調査で,もっとも信頼されているのは「裁判所」で57.8%.中国の53.5%の上を行っている.続いて韓国の34.0%,オーストラリアでは18.4%,米国に至っては9.7%と1割を切っている(諸外国の人たちがどんな組織・制度に信頼を寄せているかをグラフ化してみる).これほどまでに日本では天動説が確固たる地位を占めている.検察無謬信仰や裁判真理教を支えているのは無垢な民草というわけだ.

宗教が異なる人々の間で殺し合いがあろうとも,天動説と地動説のどちらを信仰するかでは,地球上のほとんどの人々の人生は全く影響を受けない.カトリック教会が天動説を放棄したのは1992年.コペルニクスが1453年に「天体の回転について」を出版してから449年,ガリレオの死から359年が経過していた。それは決してカトリック教会が頑迷だったからではない.

なぜなら,カトリック教会は誰かに非難されて天動説を放棄したわけではないからだ.ただ単に忘れていたのを、たまたま思い出したのが1992年だったというだけだ.天動説と地動説のどちらが正しいかなんてことは,それほど、どうでもよかったのである.それに1992年以降,カトリック教会への支持が激減した,あるいは逆に激増したなんて話も寡聞にして知らない.天動説と地動説のどちらが正しいかなんてことは,それほど、どうでもよかったのである.

カトリック教会は天動説を放棄した後も,「天動説を信じる者は復活できない」なんて馬鹿げたお触れは出していない.地球上のどこかの天文台の採用内規には「天動説を信じる人間は採用しない」との文章があるかもしれないが,差別に当たるので,表向きにはできないだろう.ましてやその他の会社に至っては、決して天動説信奉者かどうかなんて,面接では決して質問されないはずだ.

そう,天動説を信じていても,人生には何の障害も起こらない.日常生活には何の支障もない.天動説を信じ続けても地動説支持者と同様に幸せな一生を送れる.天動説信仰の場合と全く同様に,警察と検察と裁判所は自分を守ってくれる正義の三位一体神であると信じて疑わずに死んでいける日本人が実に6割!!これが真の平和でなくして何が平和だろうか.しかし,一方でこの裁判真理教が幾多の冤罪犠牲者を生み出してきた.その代表例が北陵クリニック事件である.

カトリック教会にとっても,そしてカトリック信者達にとっても,天動説と地動説のどちらが正しいかなんてことは,どうでもよかったのと全く同じように,ベクロニウムの分子量が557.84か,「516ぐらいなんじゃね」のどちらが正しいかは,「516ぐらいなんじゃね」と公言して憚らない当の土橋均氏や北陵クリニック事件に関わってきた検察官達や裁判官達にとってはどうでもいいことだったようだ.

北陵クリニック事件で,本当のワルは誰なのか?検察無謬信仰や裁判真理教という天動説から離れ,この事件の本質が科学を騙った司法官僚のスキャンダル隠蔽であると考えればその答えは自ずから得られる.

検察官も裁判官も人間だから,どこかで必ず間違いが起きる.さらに彼らは高級官僚だから,いろいろとよこしまな行動を取る.官僚は自分の昇進を何よりも大事にするから,科学的な正しさと自分の昇進のどちらを大切にするかと言えば,必ず自分の昇進の方を大切にするに決まっている.

科学者でさえ,研究費獲得のために論文を捏造する人間がいるぐらいだから,ましてや官僚が自分の昇進を犠牲にしてまでベクロニウムの分子量にこだわるわけがない.彼らにとって,ベクロニウムの分子量がいくつかなんて,出世のスピードとは全く関係ない,どうでもいいことなのだ.

何よりも出世を優先する官僚の性(さが)は,私も伝え聞いてはいるが,だからといって,ベクロニウムを質量分析してもm/z258は出ないこと実験事実を示した志田保夫先生や,矯正医官として地道に働いている私を嘘つき呼ばわりしても構わないってことにはならない.嘘つきは土橋均の方なのに,検察官も裁判官も、自分たちの保身と組織防衛を優先して,志田先生と私を嘘つき呼ばわりしている.

「両被告は組織防衛と自己保身のため改ざんをもみ消し、検察官の職業倫理に著しく違背した」(大阪地検特捜部の証拠改ざん・隠蔽事件での論告)

フロッピーディスクを自分で書き換えれば自分の立身出世がパーになるけど,科捜研吏員に机上空論鑑定をやらせれば,自分たちの業績になるってことだ.

自分の組織が抱える”スター”達のスキャンダルを必死に隠すために,「二度とこの業界で商売をできなくしてやる」とジャーナリスト達を恫喝する点では、最高検も最高裁も大手芸能事務所と何ら変わるところはない.

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