一般社団法人 日本頭頸部癌学会

頭頸部がん

Ⅱ.頭頸部の解剖

2.口腔

図Ⅱ-1-1

図Ⅱ-1-1

 口腔とは大きく口を開けた時に見える口の中をいい、入り口は上下の唇からなっています。 口腔はさらに舌、口腔底(舌と歯ぐきの間)、上下の歯肉(歯ぐき)、頬粘膜(頬の内側)、硬口蓋(口の天井)に分けることができます。 硬口蓋の後方は軟口蓋、口蓋垂に連続しています。(図Ⅱ-1-1)上下の顎(あご)にはそれぞれ成人では14~16本の永久歯が、 小児では10本の乳歯が生えています。歯以外の口腔は重層扁平上皮からなる粘膜で覆われ、粘膜の下には唾液腺(小唾液腺)があります。 また、口腔には耳下腺、顎下腺、舌下腺(大唾液腺)の管が開いており、そこから唾液が出て粘膜を潤しています。口腔の働きには、 食物を摂取する(摂食:せっしょく)、噛み砕く(咀嚼:そしゃく)、味わう、飲み込む(嚥下:えんげ)、喋る(発音・構音)等があり、いずれも日常生活に不可欠な働きをしています。

2.鼻・副鼻腔

図Ⅰ-1-1

図Ⅰ-1-1

鼻腔びくうは、鼻の穴からのどまでの空隙です。(図Ⅰ-1-1)
中隔によって左鼻腔と右鼻腔の2つに分けられ、空気の通り道です。吸気の加湿と加温の役割に加え、発声時の共鳴作用等などを果たしています。
副鼻腔(ふくびくう)とは、顔面骨内に作られた空洞であり鼻腔に通じています。前頭洞、篩骨洞、上顎洞、蝶形洞の4つがあります。

3.咽頭

 ヒトの咽頭いんとうは、上咽頭、中咽頭、下咽頭の3つに分かれます。 それぞれ、鼻の奥でのどの上の方、扁桃のあるところ、食道の入り口の部分と言うとわかりやすいでしょうか。(図Ⅰ-1-1)

1) 上咽頭(じょういんとう)

上咽頭じょういんとうは鼻の奥でのどの上の方です。口から直接見ることはできないため、内視鏡検査によって観察します。

2) 中咽頭(ちゅういんとう)

中咽頭ちゅういんとうは口をあけたときに見える場所です。四つの亜部位に分かれており、軟口蓋を「上壁」、口蓋扁桃を「側壁」(俗に言う扁桃腺です)、 舌根(ベロの付け根)を「前壁」、口を開けたときに口蓋垂(俗に言うのどちんこ)の向こうに見えるところを「後壁」といいます。

3) 下咽頭(かいんとう)

下咽頭かいんとうは喉頭(のど仏)の後ろ側付近にあり、食道の入り口にあたります。 左右の「」とそれに対面する「後壁」に分けられます。この部分は口から直接見ることはできないため、内視鏡検査によって観察します。

4.喉頭

 喉頭こうとうは舌骨より下にあり気管より上にある器官です。 のど仏とは喉頭の中の甲状軟骨の前端のことを指します。喉頭は空気の通り道(気道)で、甲状軟骨の裏側にある声帯を振動させることで発声する 役割を果たしています。そのほか食物の気管や肺への流入の防止(下気道の保護)も重要な役割の一つです。この部分も口から直接見ることはできないため、内視鏡検査によって観察します。

5.耳下腺(じかせん)と顔面神経

 耳下腺じかせんとは耳の前下方に位置する唾液を分泌する組織で、幼小児期に流行性耳下腺炎(いわゆる、おたふく風邪)で腫れる部位です。 顔面神経は耳下部の骨部から頭蓋外に出た後に、耳下腺内を走行します。耳下腺の中で顔面神経よりも浅い部分を浅葉、深い部分を深葉と分けて呼びます。 顔面神経はその後皮下脂肪組織に入り、複雑なネットワークを形成しながら顔面の表情筋に分布しています。その枝は、上方から大きく側頭枝、頬骨枝、頬筋枝、下顎縁枝、 頸枝に分けられ、支配領域に多少の重複はあるものの前額部から頸部までの表情筋の動きを支配しています。

6.甲状腺・副甲状腺

1) 甲状腺(こうじょうせん)

図Ⅱ- -2

図Ⅱ- -2

図Ⅱ- -1

図Ⅱ- -1

甲状腺こうじょうせんは喉頭(のどぼとけ)のやや下方で、気管の前面にあります。 左右に蝶が羽を広げたような形で気管を挟むように位置しています。副甲状腺ふくこうじょうせん(図Ⅱ- -1)(図Ⅱ- -2)
甲状腺は新陳代謝の調節に必要なホルモンを分泌しています。 甲状腺と気管、およびその後方にある食道に挟まれるように声帯の運動を支配する反回神経が走行しています。副甲状腺は甲状腺の裏側にある米粒大の組織で、 通常は上下左右に計4個あり、カルシウムの調節を行うホルモンを合成しています。

2) 副甲状腺(ふくこうじょうせん)

副甲状腺ふくこうじょうせん上皮小体じょうひしょうたい とも呼ばれ、甲状腺の裏側にある米粒大の組織です。通常は上下左右に合計4個あります。副甲状腺ホルモンという体内のカルシウムの調節を行うホルモン出します。

7.頸部リンパ節

 頸部には無数のリンパ節があり、それらは炎症や腫瘍などが原因で腫れることがあります。炎症にはウイルスや細菌の感染による急性リンパ節炎が代表的で、通常は痛みや熱感を伴いますが、 抗菌薬や消炎薬を飲むことで改善します。一方、腫瘍の場合は悪性リンパ腫や転移性リンパ節などがあります。これらは無痛性で硬いこと、徐々に増大傾向を示すことなどが特徴です。

禁煙・節酒宣言
日本における頭頸部悪性腫瘍登録事業の実施についてのお知らせ

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