IV. 自由回答
女性研究者のもっとも切実な願い:保育所などの保育条件の充実女性が研究をすることをめぐる環境・条件について感じていること、こうなったら良いと思っていること等を気軽に書いてもらったこの欄に83名の方から回答をいただいた。もっとも多かった意見は保育所等、保育条件の充実で、20名の方が記入されている。内容としては、
保育時間の延長 勤務先内保育所の設置 病児保育を可能にしてほしい 種々の形態の保育サービスがあってほしい 学会時の保育施設 保育ママの確保 保育に関する種々の形態の二重・三重のバックアップが必要 今回のアンケートでは子どものある人66名のうち15名が平均2年8ヶ月の中断を経験している。保育条件が整備されれば、これらの人も中断せずに研究を続け得たであろう。残念ながら本アンケートの回答者には出産・育児を機に研究をやめた人たちのデータがないが、多くの理由は中断した人と同じであろうと推定される。したがって保育条件が整備されれば35歳以後に女性研究者の数が半減する(図1参照)のも大幅に食い止められると考えられる。保育に問題の多い中で女性研究者が研究時間を生み出すためにどのように奮闘しているかは、WPJの第一回ワークショップの中で生々しく語られた(WPJニュースレター特集号No.1参照)。保育条件が整えばさらに多くの女性が研究を続行し得るであろうことは確かである。
女性が出産・育児をしながら研究を継続するには家族を含めた周囲の理解が必要次に多かったのが、女性が出産・育児をしながらも研究を続けることに対する家族を含めた周囲の理解が大切というものである(10名)。またほぼ同数の人から「男性(夫)の家事・育児への参加」「家庭内男女平等」「男性の意識改革」「研究に対する夫の理解」という伴侶に対する要望がある。平成10年の厚生省国立社会保障・人口問題研究所の全国家庭動向調査でも、男性の家事参加はあまり進んでおらず、妻の不満が高いことが指摘されている。また、外的条件ばかりでなく、女性が研究することに対する男女両性における意識変革も重要な要素であることがアンケートの回答に指摘されている。「意識変革のためは、女性研究者の数を増やすことが大いに力になるだろう」との意見もあった。
ポジション、昇任についての意見も多かった。「医学部では特に女性が後回しになる」「女性は結婚、出産があるから正式のスタッフにしないといわれる」「研究室に入りたては秘書扱いされるか無視される」「自立した研究者として認めて科研費も申請させてほしい」「出産・育児、夫の転勤等により転々と職場を変えながらもともかく研究歴を継続して業績をあげている、それにもかかわらず、リストラのためか教室事務をしている」という研究者もあり、研究をしたいという熱意にも関わらず、ポジションに恵まれない人が数多いことをうかがわせる。
出産・育児を担う女性のライフサイクルを考慮した研究制度を!また、昨今多くのポジションに35歳という年齢制限が付いているが、出産・育児を担う女性のライフサイクルを考慮してこの年齢制限を撤廃する必要があるとの指摘もあった。これは今後任期付きポジションが増加するという予想と照らして、非常に重要な指摘と思われる。任期付きポジションの対象年齢は多くの場合、出産・育児の適齢期と重なり、このため女性には不利である。そして職場から排除されるという結果になりうる。
さらに、「医学部では非医学部出身の女性の地位向上は厳しい」との指摘があった。医学部・非医学部の問題は男性にもあるようだが、女性は二重に厳しいということである。生理学の研究者には非医学部出身者が圧倒的に多いので、この問題も見据える必要がある。
なお女性が研究を続ける重要な要件として、縦横の人間関係、相談・支援・資料の得られるネットワークが重要な項目としてあげられている。ここに力を発揮できるようになるのも、WPJの目標の1つではないだろうか。
(文責 水村和枝)
目次 // アンケート質問文