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脳科学の研究室 金沢大学医学系

〒920-8640 金沢市宝町13-1

金沢大学医学部 脳神経医学教室

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研究の方向性


   脳は私たちの身体でもっとも重要な部位のひとつです。私たちの研究室では、マウスとフェレット(イタチの一種)を使って、脳の病気、発生や再生の仕組みを研究しています。

脳科学の究極の目標のひとつは、ヒトの脳の理解だと考えています。しかし、研究に多く使われているマウスは脳がシンプルで、ヒトに存在する重要な脳構造のうちでマウスが持っていないものがたくさんあります。そこで私たちは、マウスよりも発達した脳を持つフェレットを採用し、脳の理解に迫ろうとしています。フェレットを使った分子遺伝学的研究は、私たち独自のアプローチです。

また、マウス、フェレット、サルといった代表的な哺乳動物の脳を比較して、脳の進化にもつながる研究も目指しています。

気軽に話を聞きにきてください。歓迎します。
研究成果の一部はメディアにも取り上げていただきました。詳しくはこちら

これまでの主な研究成果

  高等哺乳動物の脳研究
  ヒトの脳に存在する重要構造のなかには、マウスの脳には見られないために、これまで研究が困難だったものが多くあります。この点の研究が、ヒトの脳を理解するために重要になるとの考えから、私たちは2002年よりマウスよりも発達した脳を持つフェレット(イタチの一種)を使った研究を進めてきました。

高等哺乳動物の脳を解析するためには、遺伝子操作技術の確立が必須でした。そこでマウスで用いられていた子宮内電気穿孔法をフェレットに応用し、高等哺乳動物の脳への簡便かつ迅速な遺伝子操作技術の確立に成功しました(Molecular Brain 2012, Biology Open 2013, 特許申請)。さらにゲノム編集技術CRISPR/Cas9を用いて、フェレット大脳皮質での遺伝子ノックアウトを可能にしました(Cell Reports 2017)。

これらの遺伝子操作技術をつかって、大脳皮質のシワ(脳回)の形成機構の解析を行い、FGF、転写因子Tbr2、Cdk5キナーゼが脳回形成に重要であることを見出しました(Cell Reports 2017, eLife 2017、Scientific Reports 2015, 2016)。また希少難病である多小脳回症(polymicrogyria)のモデル動物を初めて作成し、病態を明らかにしてきました(Scientific Reports 2015, Human Molecular Genetics 2017, 2018)。マウスは脳回を持っていないために、これまで脳回の研究は進んでいませんでした。当研究室で開発した技術を用いて初めて、脳回形成の分子機構が明らかになってきました。また東京大学眼科との共同研究にてフェレット緑内障モデルの作成を行いました(Scientific Reports2014)。

また高等哺乳動物の視覚神経系に特徴的に存在するM細胞やP細胞に発現する遺伝子を見つけました(Journal of Neuroscience 2004, Cerebral Cortex 2013)。また網膜から一次視覚野への投射の形成メカニズムを解析しています(Neuroscience 2009, PLoS One 2010)。

当研究室の研究技術は、高等哺乳動物に特徴的なさまざまな脳構築の解析に応用可能です。

  マウスを用いた脳構造、発生や可塑性の研究
  ヒトとマウスとで共通に見られる現象については、マウスを用いるほうが研究しやすいためにマウスで研究を進めています。

脳の発達には遺伝要因にくわえて環境要因が重要です。人生でもっとも大きな環境変化は出生(母親から生まれ出ること)といえますが、出生が脳発達に及ぼす影響はあまり解析されていませんでした。私たちは出生が大脳皮質体性感覚野および視覚系の外側膝状体の神経回路形成の開始スイッチとして働くことを見出しました(Developmental Cell 2013, Molecular Brain 2014)。極端な早産がさまざまな精神疾患や発達障害のリスクとされていますが、そのメカニズムは不明です。私たちの研究成果がこれらの解析につながることが期待されます。

大脳皮質での新たな神経回路barrel netsを見出し、その形成制御に細胞接着因子カドヘリンが重要であることを報告しました(Cerebral Cortex 2015, Neuroscience 2012, Journal of Neuroscience 2010)。そのほか回路形成、神経可塑性、臨界期および神経細胞死の論文も報告しています(Journal of Neuroscience 2012, Journal of Neuroscience 2011, Mol Cell Neurosci 2008など)

  脳の再生医学
    笹井芳樹先生の研究室に在籍中には、ES細胞から神経細胞への分化誘導技術の確立を行いました。シャーレ内でES細胞から選択的に神経細胞を分化誘導する手法を確立し、SDIA法と名づけました(Neuron 2000)。このSDIA法を用いてドーパミン神経や網膜色素上皮の作成に成功しました(Neuron 2000, PNAS 2002)。これら技術はiPS細胞からのドーパミン神経や網膜色素上皮の作成にも応用され、現在、理化学研究所や京都大学で行われているパーキンソン病や加齢黄斑変性へのiPS細胞の移植治療の端緒となりました。またドーパミン細胞や網膜色素上皮以外にもさまざまな細胞の分化誘導に応用されました(Nature Neuroscience 2005, Journal of Clinical Investigations 2005, PNAS 2003)。

  脳研究に重要となる技術開発とその医学的応用
  脳はとても多くの神経細胞の集まりです。その脳の中の一個一個の神経細胞を個別に可視化することにより近年、生きた動物の脳内で生じる変化が明らかとなりました。そこで私たちは、少数のまばらな神経細胞で遺伝子発現を誘導するThy1Sプロモータを作成しました(Mol Cell Neurosci 2011)。このプロモータはマーモセットでの遺伝子発現にも活用していただきました(Cell Reports 2015, eNeuro 2015)。疾患モデル動物とこのプロモータを組み合わせることより、疾患が神経細胞の構造にもたらす影響も検討できます。
 

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