石北直之先生 国立病院機構渋川医療センター
小児科
石北 直之 先生
ご経歴: 2004 岩手医科大学医学部卒業
2010 けいれん発作の初期治療のため、手のひらサイズの簡易吸入麻酔器「嗅ぎ注射器」を着想し研究スタート
2015 品川ビジネスクラブ第5回ビジネス創造コンテスト最優秀賞受賞
2017 内閣府宇宙ビジネスアイデアコンテストS-Booster2017 ANAHD賞
2018 米国宇宙航空医学会(AsMA)R&Dイノベーション賞受賞
専門領域: 小児科
大学院では自閉症の超早期診断及び治療介入の研究に取り組み、学位を取得した。
お仕事内容: 病床数100床の重症心身障害児(者)のケアに携わっています。
一般病床と大きく異なる点は、「医療の場」であると同時に「生活の場」でもある点です。
急性期医療には治療のゴールがあり、退院を目指しますが、重心医療の場合は退院の選択肢はありません。
ただ「治す」だけでない「支える医療」が求められますが、教科書通りの治療が当てはまらないことが多いため、患者一人一人に合わせた工夫によって日々サポートしています。
もともと日赤で仕事をしていましたが、嗅ぎ注射の研究に向いておらず、臨床研究に長けている国立病院機構へ2016年に籍を移りました。
現在は、嗅ぎ注射器以外にも関連製品の研究開発や、日々の臨床現場でこんなものがあったらいいな、と思うものを形にして、製品化に結び付けるための活動をチームで行っています。
臨床を行いながら空いた時間に、国内外の製品開発研究チームとメールやメッセンジャーで連絡を取り合っています。
必要な態度、学会や東京でミーティングを行っています。
石北先生の日常: 6:30 起床
8:00 出勤
8:30 メールチェック
9:00 病床管理、外来診察
12:00 ランチ、メールチェック
13:00 病床管理、書類作成、発表準備など
19:00 帰宅
0:00 就寝
【1年のスケジュール】
日本小児神経学会、日本てんかん学会、日本宇宙航空環境医学会、米国宇宙航空医学会など
この仕事に携わったきっかけ: 嗅ぎ注射器は、可能性に乏しかった吸入麻酔器を患者さんのベッドサイドで簡便に用いるために開発しましたが、宇宙には未だ麻酔器がないため、これらの長期有人宇宙ミッションや、民間宇宙旅行を見据えれば、嗅ぎ注射器が将来きっと役に立つと気が付いたからです。
ただ、薬事承認されていない医療機器は宇宙船へ積載できないという事が判明し、研究を諦めかけた時期もありましたが、2014年にNASAが3Dプリンターを宇宙に打ち上げることになり、ブレイクスルーが起きました。
持って行けないなら宇宙で作ればよいのです。
全ての部品を3Dプリントできるようデザイン改良するには2年以上かかりましたが、2017年1月に行われた人工呼吸器の宇宙電送実験は無事成功し、地球からどんなに離れていても人の命を救うことのできる、世界初の技術が確立しました。
NASAの宇宙飛行士は宇宙に嗅ぎ注射器を持っていくと言ってくれていますし、昨年11月には、米国火星アカデミーに「嗅ぎ注射器」が正式に採用されました。
今後の展望: 嗅ぎ注射器を本当に宇宙で役立てるために、重要な課題が2つあります。
1つ目は、麻酔ガスサイクル装置を完成させることです。
宇宙では物質は極限に乏しいため、吐き出した麻酔ガスは捨てるのではなく再利用可能にする必要があるからです。
2つ目はスマートフォン・タブレット端末ベースのAR医療マニュアルを完成させることです。
必ずしも医師いるとは限らない宇宙ミッションで医療機器を正しく組み立て正しく扱うためには、マニュアルが必須であり、マニュアルを誰もが簡単に理解できるようにするためには、スマホやタブレット端末ベースのアプリが役立つと考えています。
嗅ぎ注射器一式が置いてある箇所をスマホやタブレットでのぞくと、AI技術により各部品を自動認識し、①組み立て、②使用順番のガイドが必要に応じて表示されます。
ちょうどゲームのチュートリアルのようなイメージです。
この技術は、GoogleのAR CoreまたはAppleのAR Kitを活用することで比較的容易に実現が可能です。
これら2つのプロジェクトは、群馬県との共同研究が始まっており、来年3月の完成を予定しています。
完成したら、SpaceXへ提供するつもりです。
宇宙プロジェクトと並行して、嗅ぎ注射器は地上でも治験を行い、2023年発売(予定)時には世界シェアを一気に獲得します。
キャリアプランについて: 同じ志を持った仲間が、同じ病院に集うならこれほど素晴らしいことはありませんが、どこにいてもインターネットでコミュニケーションが取れるので、基本的にどこに勤めていても世界に通用する研究はできます。
地方勤務医の私ですら宇宙で研究ができました。
良き理解者、仲間がいる所で毎日楽しく働きながら研究しましょう。
何事にも興味を持ち、日常生活で遭遇する不便を解決しようとする心がけができるなら、何科を専攻してもいいですし、学位や専門医は取っても取らなくても全く問題ありません。
※超高額な実験機器が必要となる研究をどうしてもしなければならない場合は、研究機関や大学を目指してください。
学生へのメッセージ: 嗅ぎ注射器の研究を始めた頃は、皆に笑われ怒られてばかりで悔しい思いを沢山してきました。
一番の味方になってもらいたかったJAXAにも怒られました。
それでも諦めず頑張れたのは、そばにいる家族や仲間の応援のおかげです。
宇宙で困っていることは、地上でも困っていることです。
宇宙に関わる仕事を普段していなくても、日々の気づきが宇宙飛行士の役に立つことがきっとありますから、アイディアを積極的に出して、仲間と共に形にしていきましょう。

渋川医療センターの病院見学、訪問を随時受け付けています。

以下の新規宇宙麻酔プロジェクトの研究メンバーを募集しています。年齢・専門不問

・華岡青洲先生の通仙散復活プロジェクト
・3Dプリント注射針製造プロジェクト
・人口冬眠プロジェクト