Space Medicine Japan Youth Community は3月27日から3月28日にかけて関西スタディーツアーを開催致しました。
今回のスタディーツアーでは、1日目に岐阜医療科学大学保健医療学研究科 田中邦彦先生によるレクチャーを、2日目に京都大学宇宙総合学研究ユニット訪問を行いました。

▼岐阜医療科学大学 田中先生によるレクチャー
岐阜医療科学大学院保健医療学研究科教授・研究科長の田中邦彦先生にお越しいただき、宇宙服に関するレクチャーをして頂きました。
レクチャーは宇宙服に関する概論から始まり、宇宙服の歴史、構造とその役割について医学的知識を交えながら教えていただきました。
続いて、宇宙服の機能の中でも特に与圧と可動性のトレードオフ、そしてその解決策についての研究をお話いただき、最後にキャリアについての座談会を行いました。
映像や写真を使った分かりやすいレクチャーで、学生も活発な議論を交わしました。
与圧を低くすると身体の可動性は上がる一方、血中の空気が気泡になるリスクが上がるため、活動の準備に時間がかかります。
身体に高めの与圧をかけながらも可動性を保つための試みを、実際に先生の研究にも踏み込んで教えていただきました。
宇宙医学スタディーツアーでも宇宙服に関する内容の講義は初めてのことで、宇宙に興味を持つ医療系の学生にとって視野を広げる貴重な機会となりました。
田中先生とともに

▼京都大学総合宇宙ユニット訪問

●寺田先生
京都大学宇宙総合学研究ユニット特定准教授の寺田先生から同ユニットの概要及び取り組み、また宇宙総合学の中でも特に有人宇宙学という概念についてレクチャーして頂きました。
『部局の枠を超え、新たに「宇宙総合学」の構築を目指す』ことを目的に創設させた同ユニットは、研究はもちろん、学生を対象にした講義や合宿、一般向けのシンポジウムなどの教育活動も展開されています。
パラボリックフライト実験(微小重力実験)から「お寺で宇宙学」に至るまで様々な分野の中で語られる宇宙学について学びました。
また、有人宇宙学は、「宇宙における持続可能な社会基盤を構築するための基礎理論及び方法論を導出する」ことを目的としています。
有人宇宙学の描き出す未来に思いを馳せながらお話をお伺いしました。

●土井先生
同ユニットで特定教授をされている元宇宙飛行士の土井隆雄先生から有人宇宙学についてのお話を伺いました。
有人宇宙学の目標とする『宇宙における持続可能な社会基盤を構築する』を実現するためには、自給自足ができるようにならなければなりません。
そこで、食べ物・住居・プラスチックなどの元となる木に着目した「木を真空中で育てる研究」を紹介していただきました。また、他にも木製人工衛星を作る研究の話や宇宙での体験談などをお伺いしました。
私たちの経験を超えるスケールの大きな話に、ワクワクしてお話を聞かさせて頂きました。

●石原先生
京都大学人間・環境学研究科教授の石原昭彦先生から、長期の宇宙滞在を目指して、どうしたら筋萎縮を防ぐことができるのかというテーマで講義をして頂きました。
石原先生は冬眠中に筋萎縮が生じていないというニホンヤマネの研究や、酸素カプセルを用いた軽度高気圧下では血中酸素が増大する、等の人体の変化についての研究をされています。
そしてこれらの研究を宇宙空間での筋萎縮・骨密度低下・白内障といった課題に応用し、長期の宇宙滞在、例えば火星への移住を目標にされています。
また、酸素カプセルは宇宙医学分野だけではなく、地上での医療にも利用されています。

●神崎先生
大学院人間・環境学研究科の神崎素樹先生から、「冗長自由度の簡略化から運動の制御を捉える」というテーマでのご講義をして頂きました。
ある動きをするとき、約 400 もの骨格筋に、脳が一つ一つ指令を送ることは非効率と考えられます。
ここで、ある部位のいくつかの筋肉がまとまって動く、例えば 10 種類の筋 肉があったとして、筋 2,5,6,7 に一斉に指示を出すシナジーがあると考えれば、 中枢神経系はそのシナジーに指令を出すだけで 4 つの筋を動かすことができることになります。
今回、関節角度による筋力の違いや、歩くと走るの間の相転移を、シナジーの観点から捉え直すというお話や、無重力環境下でシナジーはどうなっていくかという実験についてのお話を伺いました。
今後は、宇宙に行った後シナジーはいつ元に戻るのか、もしくは元に戻らないのかといった研究や、
月面歩行の際に宇宙飛行士にとっては大きなリスクである転倒を防ぐためにはどのようなシナジーを作ったらいいかという研究を展開される予定です。

京都大学総合宇宙ユニットにて

最後に快くスタディーツアーを受け入れて下さった先生方に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

今回のスタディーツアーでは、1 日目に岐阜医療科学大学保健医療学研究科 田中邦彦先生によるレクチャーを、2 日目に京都大学宇宙総合学研究ユニット訪問を行いました。講義の内容等がまとめられたレポートが公開されています。宇宙医学界を牽引されている先生方の熱いご講義や参加者の疑問や感想が詰まっており、充実したものとなっております。ぜひご覧ください!

2019 年春 関西宇宙医学スタディーツアー報告書はこちら
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