研究の概要
院外心停止患者に対する管理はガイドラインで規定され心肺蘇生が施行されているが、その転帰は依然不良である。一方で、院外心停止に対して人工心肺である体外式膜型人工肺(Extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)を組み合わせた心肺蘇生(Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation:ECPR)では、救命率、神経学的転帰の改善が期待されている。ECPRは、通常の救命処置を行っても心拍再開が困難な症例に対して可及的早期にECMOを導入して、脳蘇生の鍵となる脳血流を早期に再開させ、酸素化された血液を循環させて全身の組織灌流を補い、そして適切な循環サポートをしながら原因検索として心臓カテーテル検査や画像検査などを行い原因疾患を治療する、という積極的な心肺蘇生法である。2014年にECPRにより神経学的転帰を改善することが本邦で報告 (SAVE-J study)され、日本蘇生協議会によるJRC蘇生ガイドライン2015やアメリカ心臓協議会によるAHAガイドラン2015においても、実施可能な施設において当初の従来通りのCPR が奏功しない場合に、一定の基準を満たした症例に対して提案されている。
ECPR は相当量の医療資源を必要とする複雑な処置であり施行可能な施設は限られるため、ECPRに関する過去の研究は一部の症例のみを対象とし、さらには症例数の少ない研究が多く十分な検討ができていなかった。ECPRの適応はいまだ議論のあるところであり、ガイドラインにおいても明確な適応基準や管理方法は決まっておらず、いまだ不明な部分も多い。
本研究では、院外心停止に対してECPRが施行された患者を対象としたレジストリを構築し、本邦での診療実態を明らかにし、生存率、神経学的転帰を調査し、ECPRの適応や転帰改善に寄与する因子を検討することを目的とする。
試験名 | 本邦における院外心停止患者に対するExtracorporeal Cardiopulmonary Resuscitation (ECPR)に関する多施設後ろ向き観察研究 |
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略称 | SAVE-J II study |
デザイン | 多施設後ろ向き観察研究 |
目的 | 院外心停止に対してECPRが施行された患者を対象としたレジストリを構築し、本邦での診療実態を明らかにし、生存率、神経学的転帰を調査し、ECPRの適応や転帰改善に寄与する因子を検討する。 |
UMIN-CTR試験ID:UMIN000036490
研究対象と期間
2013年1月1日~2018年12月31日までに、本研究参加施設で、院外心停止に対してECPRが施行された18歳以上の成人症例
アウトカム
主要アウトカム評価項目:退院時の神経学的転帰良好
グラスゴー・ピッツバーグ脳機能全身機能カテゴリー(The Glasgow-Pittsburgh Cerebral Performance and Overall Performance Categories)における機能良好(CPC1)および中等度障害(CPC2)を転帰良好とし、高度障害(CPC3)、昏睡・植物状態(CPC4)、死亡もしくは脳死(CPC5)を転帰不良とする。
副次アウトカム評価項目:
1) 1か月後の神経学的転帰良好、2) 退院時、1か月後の生存率、3) 合併症(出血、虚血、感染)
資金源等
研究の実施体制
研究代表者 | 井上 明彦 | 兵庫県災害医療センター 救急部 |
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副研究代表者 | 一二三 亨 | 聖路加国際病院 救急部 |
研究分担者 | 坂本 哲也 | 帝京大学医学部 救急医学講座 |
黒田 泰弘 | 香川大学医学部 救急災害医学 |
連絡先
井上明彦
兵庫県災害医療センター 救急部副部長
〒651-0073 神戸市中央区脇浜海岸通1丁目3-1
Tel: 078-241-3131 Fax: 078-241-2772
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