年を取ると変わる、体重と糖尿病の関係

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献血者集団におけるグリコアルブミン値の解析・日赤グリコアルブミン検査研究グループ 糖尿病54(5)2011 p337

日赤では献血で、糖尿病のチェックもしてくれている。
日本国内にどれくらい糖尿病や境界型糖尿病など耐糖能異常の患者さんがいるかは、様々な統計がある。国民栄養調査などでは「糖尿病が強く疑われる人は約890万人(A1cの値が6.1%以上)。糖尿病の可能性が否定できない人は約1,320万人(ヘモグロビンA1cの値が5.6%以上、6.1%未満)、合わせて約2,210万人と推定」という結果を推定している。
供血者、明らかな糖尿病や他の病気を抱えている人たちを、問診の上で、排除した筈の、元気な人達に、どれくらいの頻度で血糖の異常があるかという事では、集団の大きさや検査精度の統一性から、献血でのデータは大変意味がある。
グリコアルブミンは保存血清で自動検査機で検査できるので、献血では用い易い。GAは3で割るとA1Cに近い価になる。そのため、18.3%や16.5%という境目がA1cだと6.1%(糖尿)や5.5%(境界型)と看做す事が出来る。

明らかな糖尿病と言える、GA18.3%以上は60歳代で4.4%(男5.1%, 女3.0%)、50歳代で2.8%(男3.3%, 女1.6%)だった。これだけのヒトが、無治療であるか、供血して行けないのに献血に応じてしまったことになる。

肥満と2型糖尿病は密接な関係がある。一方で、糖尿病のうちインスリン分泌不全が強いと痩せてしまう。
太っているヒトはインスリンの効き目が弱くなるインスリン抵抗性があるが、それに打ち勝ってインスリンを分泌できているとも言える。そして若いほど分泌能力は高いので、太っても糖尿病にならずに済む。もっとも、糖尿病では無いから太っていても構わないというのではなく、将来を見据えて痩せて欲しい。
30歳未満の献血者ではBMIが大きいほどGA値も低く、糖尿病にならずに太れることを示唆している。もっとも、そもそも若年者では糖尿病は少ないから統計的な解釈は限界がある、10代の供血者28661名中GA≧18.3%は11名である。20代の供血者でも10万名名弱で糖尿病は63名である。
しかし、加齢に従って、インスリン分泌が衰えてくると、30才以上では、肥満度で階層別に耐糖能異常の割合を検討すると、BMI25を底にしてU字型・J字型を描く様になる。どの年代でも18.5-25.0のBMIの献血者で境界型糖尿病以上となるGA≧16.5%の割合が低くなっている。
高齢者ではインスリンが枯れ果てて、尿糖になって出て行ってしまうのでやせても糖尿という患者さんが増えてくる。
メタボの論争で小太り議論が起こるが、やはり、BMI25未満は一つの目安と言えよう。


献血で糖尿病が調べられるといってもそれを便利に思って、検査目的の献血は避けてもらいたい。特に、薬物治療をしているヒトの場合、供血したものが輸血されると患者さんに思わぬ副作用が出る事も懸念されるからだ。検査目的でなくても、善意があっても患者さんは献血できない。献血できるくらい健康なヒトから輸血されないと事故の元になるかもしれないからだ。


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