健康と食べ物ー畜産ー

牛乳は余る

2006-05-26

雪印が倒れたのは、低脂肪牛乳の生産にともなう、乳製品の不正再使用が、引き金の一つであった。生乳を脱脂粉乳と水で割る。そう云う作られ方をして、低脂肪乳は供給される。 さて、農家と云えば、「濃い牛乳」でないと買い取ってもらえないので、汗水ながして色々な努力を払っている。[農業情報研究所(WAPIC)H18.5/25]

消費者にとり、この濃い牛乳というのは、魅力的なのであろうか。牛乳に求めるイメージと、乳価格形成プロセスに齟齬が有る事が、余乳問題の一角を生み出し、先程述べた様に調整乳による事故を生み出している様に思える。
牛乳に求める物は、「カルシウム」であろう。脂肪は濃い味付けをもたらし、脂質による情動も報告されているが、健康に良いというイメージはカルシウムからもたらされている様に思える。 乳脂肪といえ、脂肪は脂肪であり、催動脈硬化作用の強いパルミチン酸などの飽和脂肪酸が乳脂質の多くを占めている事を忘れてはいけない。フードピラミッドの考えから、乳製品は1〜2単位とることが勧められるが、それ以上の摂取は脂肪のとり過ぎになる。

乳価の維持。じゃぁ、油を与えて乳脂質を改変しようと云うのも本末転倒になる。穀物にも油が含まれている。とくにフスマは胚芽油などが多く含まれている。濃厚飼料はサラダ油を絞る菜種やトウモロコシ、大豆を多く含んでいる。これらの一価脂肪酸を増やすのは、乳価を求める農家にとり必然で、飼料メーカーたる農協も叱咤激励する(って資材を売るためもある)。

乳腺細胞にて第一胃で合成された酢酸やケトン体が脂肪に合成される。それが本来の乳脂肪なのだが、飼料由来の血中の脂肪が乳脂肪にそのまま牛乳になるなら、サラダ油でいいんじゃないかとおもえる。それらの酢酸は、青草などの繊維質を反芻し体内で発酵させながら合成される。
「あおくさ」、草を食む青空の下を闊歩する健康的な牛のイメージ、そのものであり、消費者心理に訴求するが、実態は畜舎飼いで濃厚飼料というのは皮肉であり、消費者の求めない高脂質乳が生産されても消費が伸びないので、廃棄されるというのは悲劇である。
脂肪を減らして太らないで済ませたいのが消費者心理であり、国策としての健康日本21である。米国では児童の肥満を防ぐため、自動販売機から成分無調整牛乳が撤去されるくらいなのである。

# Low fat and non fat regular and flavored milk* with up to 150 calories / 8 ounces
School Beverage Guidelines

青草や稲藁などによる低脂肪乳の生産と供給の確立、それが余乳問題の解決策と思う。


[追記 H18.11/30 Jミルク「牛乳・乳製品輸出の未来を語る会」日本農業新聞 11/29付]

バイオマス等というが、1kg20円の米作りは骨である。結果としてできた穂発芽米やカドニウム等の汚染米の処理なら兎も角。


そう云う意味では、付加価値の高い裕福層に向けた輸出農業が幅の狭い生き残りに掛けた農業の選択肢であろう。
それで、明治が輸出すると上海で牛乳が1L570円になるそうである。相手方のコールドチェーンが前提になるが、香港向けのLL(常温保存牛乳)は300円となる。

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