リョウ&ナオ

2013-10-14

川端裕人著・光村図書出版、ISBN 978-4-89528-689-3

オトコオンナという言葉が出てくるがナオが女の子だ。リョウが男の子。
ナオは心臓を病んでいて息切れしまうし、周りの大人の過度な配慮が更に息詰るのか、撥ね除けようと更に快活であり、そんなナオのタレントにリョウは羨ましい気持ちでやや気圧されている。
タキジさんは鉱物愛好家だ。小学3年生のときのナオに石の事を教えた。でもナオは自分が女の子だと教えていない。意地悪だ。小学校4年の夏に、ナオはリョウを伴って、タキジさんの採集に同行する。今まで先延ばしにして来たがちょうど立ち消えになる折だったのか?心臓がバクバク言うだけの探検でもあった。
「体が弱いって言っていたろう」「おれ、なんでもできるような奴だったら、こういうのに出会ってねぇと思う」そう言われて、自由で何でも出来る様に見えるタキジさんでも不自由や枠がある事を聞かされた。なんでもできる人ではなくて逆だったからこんなに自由に見えるんだ!と発見し、さぁ割りなと渡された標本に割を入れると、いきなり赤い色が目に入った。地球のハートの色を目にして、ドキドキしたとおもったら、それは心不全でヘイヘイホウホウの呈で引き上げて来た
タキジさんは、不自由な性格を更に不自由に見られてしまった。女の子を連れ回して病気を悪化させた不審者と後ろ指をさされてしまう。
ナオはベッドのなかでロマンとハートは、不自由さと自由さのコントラスト故に浮かび上がると感じた。地球の奥深くでも赤い心臓が息づいているし、見つけ方が判ったから色々な事をさらにしてみたいと思った。

小学校6年の3学期にリョウは私立中学校の勉強をしているそこに電話が掛かって来て、突然厳しかった父親は取り繕ったように温和になる。母親は嗚咽を漏らしているのが部屋から聞こえてくる。リョウは雪の中、独りで試験に行く。そして面接を前に、校門を出て病院へ向かう。
本当は一緒に行く筈だったナオは病床だ。だった筈だ。しかし、当然の様にそこには居ない、昨夜の両親の振る舞いを思えば必然だった。
ナオが亡くなって、自由で何でも出来る様に見えるナオが何を感じて何をしようとして来たか?追体験の中学生活がスタートする。

駅の改札で「この前もみたけど……つきあっているの?」そう唐突に数ヶ月前まで同じ小学校に通っていた女子中学生に、リョウはナオミとの関係を尋ねられる。
ナオミという女の子と世界中を調べて回るプロジェクトにリョウは加わった。世界を回るにはナオミのように英語も判らないとなぁと教えてもらう事にした。
受験して受かって望みの学校で思い通りの中学生活を始めて、そういう「自由」で「出来る」ヒトにとっては次のステップは恋愛かもしれない。それはそれでレールの上を滑らかに進むのは幸せな事だ。想定内の想定を順番通りできるのは素晴らしい。
でも、それは「自由」という枠に縛られた、レールと言う枠の上の出来事だろう。
ナオミがどうか?リョウがどうか?想像の埒外にあるようだ。
 「彼氏が居る居ない」そのような事だけで教室の中で話が進む。ナオミはそれに窒息しそうだ。いろいろな疎外感に苛まれる。
 プロジェクトにいれば矢張りナオの陰が付いて回る。自分はナオミなのに。 
 世界の極端な場所を回っていたプロジェクトが何故か東京に来る。そしてナオの足跡を辿る。そうして来年の話になった時に、リョウはお仕舞いにして換わりの女の子を指名する。お別れにナオのペンダントをナオミに渡そうとする。リョウは本当に酷い奴だ。
「ペンダントヘッドは重すぎる」ナオミにとっては当然の反応だろう。
ナオミにもリョウにもナオはまだ重しになっている。それぞれは夫々で、ナオからすれば羨ましい限りなのに、ナオは二人に陰を差す。二人が一緒に居たり、ナオの換わりをするとか、どうとかがナオの伝言ではない。
その不自由さが自由を浮かび浮がらせるとナオが見いだしたメッセージを納得するのはまだ先だ。ほんとうにナオミほど可哀想な登場人物は居無いなぁ、それでも


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