第3回p-drugワークショップに参加して

昭和大学薬学部臨床薬学教室・徳山尚吾

 平成4年に医療法、平成9年には薬事法・薬剤師法が改正され、薬剤師の責任と義務が謳われる様になり、医師、看護婦とともに チーム医療の一員として薬剤師に対する厳しい職能倫理と医薬品の適正使用を目指す高度医療への積極的な参画が要求されて きている。さらに、近年の薬剤師業務は、単なる調剤から病棟、在宅医療、治験など多岐にわたっており、従来の基礎薬学に主眼を おいた薬学教育に加え、変貌する医療環境に十分に対応出来る薬剤師教育が求められている。特に、‘薬のプロとしての薬剤師’は 実際の臨床現場における薬物治療に直接的に貢献することで、社会に対しその存在意義をアピールすることが緊急な重要課題の一 つである。それらに付随して大学における薬学教育の抜本的見直しも迫られており、日々苦慮している状況にある。

 その様な中で、「大学、病院、企業関係などで、医薬品の適正使用について教える方、今後教える可能性のある方、自分の薬物療法 の質を上げたい方など」を対象者とするとの魅力ある案内に目を引かれ参加したのが、8月9-11日に東京都町田市で開催された第3回 p-drugワークショップである。参加者は、医師・病院/調剤薬局薬剤師、企業関係者などで、講師は南アフリカ共和国、また、韓国、台湾、 マレーシア、キルギスタン、フィリピンからの招待参加者もあったため、国際色豊かな雰囲気の中で研修は進められた。初日はp-drugの 概念を理解するための講義を中心に行われた。私自身は、「医薬品の適正使用を目指して、エビデンスに基づき自家薬籠中の薬を選び、 ついでそれを正しく患者に用いる」ということがp-drugの概念であると理解した。2日目は、参加者が小グループに分かれて、高血圧症の 症例に基づき、1日をかけてP-drugの概念に基づいた適切な薬物選択の実践を行った。今から考えると、この一日はまさに貴重であった。 それは、P-drugの概念の理解のみに留まらず、普段の薬物治療において十分に意志疎通がなされていない医師との間に十分なdiscussion の時間がとれた点である。また、病院や調剤薬局勤務の薬剤師とのdiscussionも今後の薬学教育を考える上で非常に参考になった。 これらは望外の喜びであり、今回の参加の意義が一段と高まったと考えられる。また、その夜には懇親会が催されたが、昼間の興奮覚め やらぬ状態にアルコールの助けもあって、会は否応なしに盛り上がり、皆の親交がさらに深まったのは言うまでもない。最終日は、学生に 対する評価法の講義があり、さらには今回の研修における成果を今後それぞれの現場にどう持ち込むかについての討論がなされた。我々の 大学でも今回の研修で学んだノウハウを十分に吟味して、カリキュラムの中に積極的に取り入れていこうと考えている。以上、3日間の ワークショップは無事に幕を閉じた。

 今回の参加のみでp-drugの概念を完全に理解出来たとは言い難いが、個々の患者に対する最適な薬物選択の体系化された方法論の 一つとして価値あるものであると思われる。今後、本会のますますの発展を祈念すると共に、皆様の積極的な参加を期待します。


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