5th Training Course on Teaching Rational Drug Therapy参加レポート

12-21 August 1998, Groningen, The Netherlands

(第13回臨床薬理富士五湖カンファレンス, 1998.8.28-29

報告書中の「P-drugとは」より一部加筆修正)

東京医科歯科大学難治疾患研究所・情報医学研究部門(臨床薬理学)・助教授

津谷喜一郎


只今,内田先生からご説明いただきましたが,タイトルがプログラムと変わって申 しわけありません。医薬品の適応外使用のエビデンスの中間報告書を20部コピーし て持って来ましたので,全員には行き届かないとは思いますが,各施設に1部はいく と思います。ただ,これは厚生省へ提出した中間報告書で,まだ厚生省からは公開し ていません。来週とかと言っていましたが,もうちょっと遅くなるかもわからないと いうことなので,一応本年8月いっぱいは他へ出さないように,特にマスコミには出 さないようにということで,皆さんの手元にとどめておいていただきたいと思います。

〔スライド@〕たまたま本年1998年8月12日から21日にかけてオランダの Groningen大学でありました"5th Training Course on Teaching Rational Drug Therapy",つまりP-drug,Personal drugなるものを教える教師養成のためのコース に参加してまいりましたので,今日はその報告をさせていただきたいと思います。 Groningenはオランダ語の発音がむずかしいのですが,私にはグローニンゲンではな く,フローニンゲンと聞こえます。(1999年から名称がInternational Course on Teaching Rational Pharmacotherapyに変った。このコースなどの詳細は http://coo.med.rug.nl/summerschools/index.htmにでている)
もともと,このコースに出るきっかけになりましたのは,今,お回しますが, "Guide to Good Prescribing"という,何かGCPと勘違いしそうな名前なのですが,そ ういうタイトルの本がWHOから1995年に出ました。現在,15カ国語に翻訳,一 部終わっていますし一部は進行中なのですが,その日本語訳を私が別府宏圀先生と佐 久間昭先生と一緒につくり,『P-drugマニュアル』として本年1998年4月に医学 書院から出版しました。その後,5月にたまたまWHOのジュネーブ本部へ行った時に, この原著者は4人いまして,2人がGroningen大学の臨床薬理学者,2人がWHOのDrug Action Program(DAP)の担当医官なのですが,その1人のDr. H. V. Hogerzeilにこ の日本語訳を渡しましたら非常に喜んで,「Groningenのコースに出てみないか,出 るのであればその参加費用をWHOの予算で出してやろう」とのことでした。
その時にこのコースのパンフレットをもらいました。"E-drug"という,e-mailのメ ーリングリストがあります。こちらは"essential drug"の略で,医薬品の合理的使用 に関するなかなかおもしろい情報が来ます。私は,Dr. Hogerzeilに話を聞く以前に この"E-drug"でこのコースがあるということは知ってはいたのですが,参加費が6, 000ギルダーします。今1ギルダーが約70円ですから約40万円するんですね。 これは宿泊代込みなのですが,これに飛行機代がかかります。わざわざ50万円以上 も出して行くこともないなと思っていたんです。ところが,参加費の方はWHOで出し てくれるということで,では出てみようと思って参加しました。ただ,これは大学の 寄宿舎に2人1部屋だということで,私は,相方が悪くて眠れなくなるといけない (笑),と思って,追加で少しお金を出して,ホテルで一人部屋にしました。
〔スライドA〕コースは全体で10日間です。3つのパートがあります。ここでは moduleと称しています。まず参加者が学生としてこのP-drugを学ぶ。これが水曜から 始まって土曜までの4日間で,日曜にはアムステルダムツアーがあります。翌週は月 曜から水曜までの3日間,今度は教師となって,模擬学生にP-drugについて実際に教 えます。その後まとめがあります。















〔スライドB〕このコースは今回が第5回で,毎年夏やっていますが,例年20人 弱の参加者で,今年はちょっと多くて31人でした。参加者の国別の数をみると,ヨ ーロッパではブルガリア,クロアチア,チェコ,エストニア,ドイツ,ラトビア,マ ケドニア,ポーランドなどとあって,東欧が多いですね。アジアは私と,日本からは 初めてだそうですが,他にインド,インドネシア,タイ。トルコが6人もいるのは, オランダやドイツはもともとトルコ出身の方が多いためです。60年代から多くなっ たということで,国会議員になった人もおり,オランダとトルコの関係は結構深いの ですね。このコースのOrganizing Committeeにもトルコ人の講師が入っていました。 あと,南米,アフリカからです。アフリカの方だと,フランス語圏の方が多くて,な かなか英語が話せないので,私は親近感を持って一緒にいました。
ただ,お気づきのようにこのコースの参加者は途上国の人が多いですね。ICH countriesや先進国だと,今回は日本とドイツしかいません。イギリス,フランス, 米国などはいないです。ドイツからの参加者は医学部を卒業したばかりの若い人で, ケルン大学の薬理学の教室に入って,一つはジェネラルなpharmacologyに関心があり, もう一つはこういう臨床薬理学の教育に関心があると言っていました。アフリカの Core d' Ivoireの人はフランス語でうまく連絡がとれなくて,結局来れなかったとの ことです。
〔スライドC〕ここでP-drugそのものの説明しておきます。Step@からStep Dま での5つのstepがあります。まずこのP-drugの"Personal" というのは,医師側,医 療従事者側の"Personal"という意味です。患者側ではありません。まずStep@でその 診断を定義し,Step Aで治療目標を明確にした上で,Step Bでそれに対する inventory,つまりどんな薬物群があるかの表を作ります。Step Cでどの薬物群がい いかというようなことをsection criteriaを使って選択する。Step Dで今度はその 薬物群の中からP-drugを選ぶわけです。この「薬物群」を何と呼ぶかはテキストには 書いていないのですが,通常,"P-group"というように表現しています。







〔スライドD〕それができたならば,実際の現場の患者さんにどう使うかになりま す。こちらはStep 1からStep 6までの6つのstepがあります。Step 1は目の前の 患者さんの問題の同定です。Step 2は治療目標の特定。Step 3は,先ほどのように して選んだ自分なりのP-drugがありますから,それが一体患者さんにとってsuitable なものなのかどうかを確認する。Step 4は処方箋を実際に書く。Step 5はadvice, instruction,warningなどの情報を与える。最後のStep 6はその治療の結果をモニ ターする。こういう明確なロジカルなステップに分けたというところがミソです。か つ,P-drugの選択の場面と,その現場での使用場面の2つのセットに分けたのもミソ です。ただstepがやや細かすぎて数が多すぎるような気がするのですが,おそらくヨ ーロッパ人の思考法が反映しているのでしょう。




〔スライドE〕最初の4日間の初日は,まずこういった表を与えられて,この時は hypertensionでしたが,高血圧という診断のもとに,この表を埋めなさいと言われま した。実際の進行は小グループに分かれて,別々の室で行われます。私のところは5 人でした。それにfacilitatorが1人つきます。私のグループのfacilitatorはロシア 人の女医さんで,彼女は前年の参加者だったのですが,よくできるということでスカ ウトされて,今年のfacilitatorとなっているわけです。ただ,彼女にこの表を埋め よと言われても困ってしまうのです。降圧利尿剤もあれば,β−blocker,ACE inhibitor,Ca antagonistもあるわけですが,具体的に何を書いてよいかわからない。 参加者全員には"British National Formulary"(BNF)が配られていますが,これし か手元にないんですね。これで埋めよと言われても非常に困る。Efficacyといっても, 血圧降下作用なのか,long termのmortalityやmobilityを下げるのかもわからないの で混乱するんですね。しかしそのように混乱するところがミソで,自分で考えて,そ して5人でディスカッションしながら,それで足らなければ,実際に自分でいろいろ と調べて埋めよということなのです。
たまたま私のグループに,トルコ人で英語がよくできる人がいて,ただ,その人は やたら詳しいのです。それはトルコから毎年何人も来ていますから,今までこういっ たやり方でやるということを知っているのです。彼がグループ内で知識をいろいろ披 露する。私はβ1,β2specificの違いやISA plus,minusのこともよく思い出せなく て,あわてて同じビルの中にある図書館へ行って,ハリソンの教科書の高血圧のとこ ろをコピーして,急いで読んで対応していたというところです。
上の4つの項目のパーセントはweightを示すわけです。例えばEfficacyが40, Safetyが40,Suitabilityが10,Costが10となります。ただ,これも国によっ てcostのweightは違う。保険制度が発達していないところもありますから。また数字 で表すweightは一見科学的ですが,weightに基づき加算するというlinear modelがよ いのかどうか。こういったところも,参加者に自分で気づかせて勉強させるという格 好です。
〔スライドF〕私はよくわからなくて,このように汚い字で, Diureticsから始め て,β-adrenoreceptor blocking drugs,…などとBNFにしたがって書きました。そ してグループとして1つのコンセンサスを作りあげるわけです。あとで他のグループ をみると,このようにプラスマイナスでやるところもあれば,1から10までの数字 を入れるグループもあれば,1から5までの数字を入れるところもある。大事なのは そこへ至るプロセスということです。









〔スライドG〕つぎに,高血圧に対して私のP-drugを選んで,上から順番にこう書 いていくわけです。私の場合,β−blockerの中で何を選んだかちょっと忘れました が,ただ,その名前だけではなくて,どんなdosage formで,1日何回で,何日処方 するところまで含めて,自分のパターンを決めてしまうのです。それがP-drug。
















〔スライドH〕2日目は,特定の患者に対しての薬の選択です。こちらはPersonal drugではなく,"Patient drug"と呼んでいました。同じP-drugで覚えやすいのですが, 略して言うと混乱しますね。具体的なケースが提示されます。57歳で,今まで食事 制限をしたのだがあまり効かなかったとかです。こういったいくつかのケースが提示 されて,今度はpersonal drugのsuitabilityが大事になるわけです。他の薬物との interactionとか, contraindicationだとか。あるいは1日に何回。そういったこと も考慮しながら,このケースに自分のもっているP-drugがPatient-drugになるか。 Personal drugがPatient-drugになるかというようなことをディスカッションして決 めていくということです。












〔スライドI〕これはここのセッションで使う"Patient drug concept"のworksheetです。"Contraindications,Interactions,Convenience"とありますが, Convenienceはkineticsに関連するわけです。そういったことを考えて書きながら,Drug, Administrative Form, Dosage, Length of Treatment, Non-drug Treatmentと, この患者にとって一番最適なものを決めていくわけです。実はこのwork sheetはコースが始まる前に,参加者本人に送られてくるcourse materialに入っているものです。 しかし,とても全部読みきれない。私はさぼってほとんど読まずにいました。ところが,現地でよく読んだり他の参加者とディスカスすると,このwork sheetには"Define the problem"はあるのですが,"Define the therapeutic objective"がないのですね。このcourse materialは毎年改善されますから,来年は入ると思います。











〔スライドJ〕3日目は,実際に処方箋を書く段になります。この3日目から模擬患者となる学生が入って来ます。彼らはGroningen大学の医学部の学生が主で,一部 薬学部の学生もいました。1年生から6年生まで15人程いました。アルバイトで,1日12ギルダー,ですから1日800円ほど支給されると言うことです。彼、彼女 らを目の前にして,問題の同定から始めて,先ほどのステップにしたがってその患者にとって最適な薬を決めて,いろいろなinstructionを与えるというところまでやる わけです。実際には4人の学生が1人ずつ室に入って来て,グループの5人の中の1人がそれぞれ対応しているのを他の4人がみて,あとでdiscussする格好です。4人 目が終わってやれやれと思っていると,急にその部屋に電話がかかってきて,パニック風の患者が「高血圧で頭が痛くてしようがないんだ,どうしたらいいんだ」と訴え てきます。それに対してどう答えるか。「私は電話では状態がよくわからないから指示はできないのだ」と言うと,その患者がすぐに来てしまうんですね(笑)。模擬患 者だから室の外ですぐ近くにいるのです。またそれに対して対応しないといけないので,参加者にはストレスがかかるのです。学生は楽しんでやっていますが。それが3 日目ですね。全く"practical"なものです。初日の"personal",2日目の"patient",3日目の"practical"と,3つ"P"が続くわけです。






〔スライドK〕4日目は,これまでの3日間に我々は教育されたわけですが,それが本当に教育されたかどうかというようことをテストされるのです。小部屋が8つほ どあって,その中の3つの小部屋に順々に入って別の3人の模擬患者に,実際にP-drugのコンセプトを用いて,最終的に処方箋を書くところまでやるのをテストされ るわけですね。
















〔スライドL〕このように,小部屋の奥がハーフミラーになっておりまして,これはミラーの向こう側から写真を撮ったところですが,facilitatorが我々がどういう 対応をしているのかを見ながら採点するんですね。

















〔スライドM〕採点する時に,これは"OSCE"といっていますが,objectivestructured clinical examinationの略だったかな?。こういう構造化した採点表を 使って,define the problemをきちんとやったか,contraindicationについて,ちゃんと聞いたかどうかとかなどと,順番に0から5までの6段階のスケールに丸(○) をつけてきます。
















〔スライドN〕このテストの結果はどうかといいますと,全部でこの日は31人いたわけです。グループでは,最初の3日間は高血圧を中心に勉強したのですが,3日 目の午後にfacilitatorから,「明日3人の模擬患者をみるのだ。2人が高血圧で,1人が喘息だ」といわれて,あわてて私は図書館へ行ったり,ホテルへ帰ってコピーを 読んだりして勉強して,P-drugをつくって対応しました。結果はこういう表が張り出されます。Participant は封筒に入れて各自に手渡されます。私はParticipant 21 です。右の方がよく見えませんが,これはわざとやったのではなく(笑),コピーしたからこうなったのです。100点満点なのですが,私は57点。私がビリかと思った ら,ビリから3番目だったんですね。昨日のボーリング大会は私はビリから2番目だったのですが,下には下がいるものだなとも思いました(笑)。








〔スライドO〕日曜日をはさんで,次の週からは,我々参加者が教える側teacherになります。ここではfacilitatorと呼んでいます。この写真の向こう側のテーブル にGroningen大学の学生が4人来ています。彼らにアフリカのBrukina FasoからきたDr. Kabare,フランス語系で英語があまり得意でない人が,P-drugを教えています。 こちら側のテーブルには参加者の5人のうち4人,スペイン人とトルコ人と日本人の私ということになります。スペイン人は写っていません。もう一人の後ろ向きの彼女 はロシア人のfacilitatorです。我々の教え方をみているのです。トルコ人の彼は何か書いていますが,彼はfacilitator役のDr. Kabareが4人それぞれの学生に何回会 話したか,あるいは4人全体に対して何回話したかということをカウントしています。





〔スライドP〕この写真はスペインからの参加者が教えているところです。彼女は大学で薬理学を教えているとのことです。このコースの参加者は多様です。一般の薬 理学者,臨床薬理学者,または内科医もいます。例えば北欧のEstoniaには,1つしか医学部がないのです。4年前の2回目のコースに薬理学の教授が来て,去年は助教 授が来て,今年は講師が来た。つまり,その国で薬理学を教えているほとんどの人が教育されてしまうという形になります。
さて,スペインからの彼女がpatient-drugを教える時には,グループ5人のうちの1人のトルコから来た女医さん,この時は,この写真の右の方でコンピュータに向か ってインターネットを使い,情報を集めているわけですが,彼女を模擬患者にして,スペインの彼女がこのトルコの彼女にどう教えるかを学生たちに見せて教えるという 形とりました。こうした教え方も自分で考えろということなのです。




〔スライドQ〕この写真は,2週目の3日目のpracticalなセッションです。Dr. Kabareは考えて,学生同士に医者側と模擬患者側の役割をさせて,医者役の学生には 具体的に処方箋の書き方までをやらせています。












〔スライドR〕先ほど会話をカウントしているといいました。これがその結果です。Dr. Kabareが何回しゃべったか,この線,1本が1回に相当するわけですが,彼が各 学生,あるいは全体に,何回会話があったということを示しています。この例では,ほとんどが全体に話しています。これはよくない。ここでとっている教育法は, problem orientedで学生に考えさせる,学生にディスカッションさせるのがゴールです。したがって,教師役が多く話すのはよくない,ということです。これが初日のも のです。














〔スライドS〕これは2日目のもので,JeanというのはDr. Kabareのfirst nameで す。だいぶ改善して,全体に話すのは少なくなっています。ただし学生間のディスカ ッションは,まだ多くありません。

















〔スライド21〕これはDr. Kabareの3日目のものです。大いに改善して,全体に対 してはほとんど話していない。学生間でのディスカッションの回数が増えてきた。こ れは非常に改善したということですね。

















〔スライド22〕teacher側とstudent側が話す時間も実際に計ります。facilitator, つまりteacher側が最初55%,student側が40%話していたのが,日がたつにつれ,だ んだん逆転しています。これはグループの他の参加者が分担して計って計算してデー タを出すわけです。

















〔スライド23〕これは参加者がfacilitatorとしてどうふるまっているかを評価す るものです。Learning Objectives, Problem-Solving, Processから成り立ってい ます。5人のうち1人がfacilitator側としていますから,他の4人が,この facilitatorが,(1) Learning Objectivesについては,学生に教える時に目的をはっ きり言わなかった,ちゃんと言った,コースの,その日の目的が達成されたかどうか を学生に話したか,あるいは学生にこの目的をよりよく達成するにはどうしたらいい かを聞いたか,(2) Problem-Solvingでは、問題があった時にすぐ答えてしまった, なかなか答えずに最後になって答えた,答えずに何で答えないのか、いつこの答えが 必要なのかを言った,最後に学生に自分で回答をみつけろと言った,(3) Processで は,議論が混乱した時にも何もしなかった,議論が混乱した時に介入した,議論をう まく刺激した,本当の問題解決型まで導いた,などと評価するわけです。




〔スライド24〕第2週の4日目は,今度は我々が採点する側になって,マジックミ ラーのこちら側に入ります。また,我々の1人が今度は模擬患者になって,教育され た学生が,具体的にちゃんと問題を聞き出して,自分のP-drugなるものをつくって, patient drugを選び出して,コミュニケーションして,処方箋まで書いたかというこ とを,先ほどと同じScoring Systemを使って評価するのです。















〔スライド25〕第2週の5日目の金曜は,全体のまとめです。Essential drugの 話などがあります。そこでWHOのDr. Hogelzeilが20分ぐらい話しました。これはその 時に一番初めに使ったOHPです。コピーしてもらってきたものです。日本は1年間に 薬に400ドル使う。今回のコースはインドから参加者で来ている人もいましたが, インドでは3ドルしか使わないということで,これを見ていて,日本人として喜んで いいのかどうか複雑な気持ちになります。












〔スライド26〕その前にポスターセッションがありました。このコースで学んだこ とを自分の国でどう生かすかというプランを各自書くのです。そしてお互いに批判し 合うのです。写真の彼はLatviaからの参加者です。私のところにしょっちゅう来て, この方,大鵬薬品と共同プロジェクトがあるらしいのですが,もっと日本の会社を紹 介してくれないかというようなことをいっていました。
















〔スライド27〕このポスターは東欧の人のものです。その国で臨床薬理学や Problem-based Learningの歩みが遅い。今回のコースで学んだことを自分の国へ持っ て帰り,ダイナマイトに火をつけて私は画期的に改善するんだというようなことを言 っています。

















〔スライド28〕これは私のポスターです。隣に立っているのがペルーからの参加者 です。ペルーには臨床薬理学者は1人しかいないとのことです。彼,実は水洗先生 (Dr. Alejandro Midzuarai)といって,熊本出身の二世の方です。日本語は全くし ゃべれません。スペイン語で生活していますが,英語は私と同じくらいのものですか ら仲良くなって,いつも中華料理屋に行って一緒に食べていました。ポスターで大事 なことは,ここで学んだことをいかに自分の国へ帰って展開するかということです。 各国によって状況が大きく違います。先進国ではドイツと日本からの参加者で,この ドイツ人ともディスカッションしたのですが,ドイツでは学生時代に3回,国家試験 があるんですね。進級するために。そうすると特定の大学だけでこうしたコースを取 り入れるのは難しいとのことです。つまり先進国の間でも状況は違う。各国によって いろいろな状況がありますから,そこにどう取り入れるかということが重要です。



〔スライド29〕私がポスターに書いたプランは,日本でワークショップをやるとい うものです。具体的には浜松医大の大橋先生に協力をお願いしています。大橋先生の ところの浜名湖カンファレンスでは臨床の現場に則した臨床薬理学教育をやっておら れます。それが土曜日にありますので,その翌日,日曜日,本年は12月6日に,1 日のP-drugショートコースをワークショップとして開催しようと思っています。
また,日本で臨床薬理学関係のカンファレンスは,浜名湖カンファレンス以外に, 富士五湖カンファレンス,日光カンファレンス,阿蘇九重カンファレンスとあります ので,ここから代表の方に参加していただく。また東大薬剤部の折井先生と,P-drug マニュアル訳者の1人の別府先生にも入っていただいて,ネットワークをつくれれば と思っています。まず第1回目を浜名湖でやって,できればネットワークの持ち回り でやりたいなと思っています。Dr. Hogelzeil,彼も実はオランダ人でライデン大学 出身なんですが,彼に来てもらって指導してもらおうということを今考えております。 ワークショップはあまり大きくせずに20人ぐらいでいいかなと思っています。皆さ んも是非参加していただきたいと思います。事務局をコントローラ委員会というとこ ろにお願いしているのですが, tel. 3791-0202で,清野さんか多田さんという方が 担当していただいていますので,連絡して下さい。





〔スライド30〕最後に,Evidenced-based medicine(EBM)とこのP-drugとの関係 を少しお話したいと思います。EBMは左のカラムに示しましたように,通常,問題の定 式化,情報収集,批判的吟味,患者の適応の4つのstepで説明されます。右のカラム が「P-drugの選択」ですが,この5つのstepというのは,EBMのStep 2の情報収集と Step 3の批判的吟味のところが少し拡大されたもの,つまり薬物治療について拡大 され細かくなったものに対応するということになります。それを目の前の患者に適用 する,つまりpatient-drugになるわけですが,中央のカラムの「P-drugによる患者の 治療」のStep 1の患者の問題の定義と,Step 2の治療目標の特定というところが, EBMでいうStep 1の問題の定式化に対応します。P-drugのStep 3の適切性の確認, Step 4の処方箋を書く,Step 5のアドバイス,Step 6のモニターというところは, EBMでいうStep 4の患者への適応に対応するということになります。先に話しました ように,このP‐drugのstepの分け方は少しくどい気がしますが,より具体的なaction について述べているものともいえます。
P-drugのテキストのドラフトの最初のバージョンができたのは80年代後半で,そ れから少しずつ改善しながら教育に使ってきたということです。いわゆるEBMの動き というのは90年代に入ってからですので,P-drugの方が先行していたわけです。我 々はEBMの方がなじみが深いのですが,それから見ると,P-drugの教科書にはEvidence のコンセプトがちょっと弱いという感じがします。ただ改訂する時には改善されるで しょう。また,このP-drugの教師向けの本というのも作成中で,Groningenではその ドラフトが参加者に配られて,何か気がついたらコメントしてくれということでした。 そういうことで,だんだん世界的なEBMの流れと,このP-drugがうまくマッチする ようなことになるのではないかと思っております。


司会(内田) どうもありがとうございました。何か質問なりコメントなりおあり でしたらお願いいたします。だいぶ時間も超過してきたのですが,何かございますか。 Personal drugはEvidenced-based Medicineに基づいた形での,我々医師にとって も非常に重要なことだと思っておりますので,ぜひとも計画されているワークショッ プにご参加くださるようにお願いいたします。では時間がきましたので,安原先生, 中野先生お願いいたします。



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