【目的】 スライド写真の配布による従来の形態学的検査のコントロールサーベイは、個人単位または小規模施設の参加が困難、出題症例数が限られる、超音波断層検査など動画像では実施が困難などの限界があった。一方、インターネットを活用して標本写真やビデオ画像をホームページで手軽に閲覧できるようにしたうえ、回答、集計結果、講評等もインターネット経由とすれば、サーベイの実施および参加の負担が著しく軽減され、これらの問題は解消する。更に画像の複製や保存による色調変化などの心配がなくなり、国際的なサーベイへの規模拡大も容易になる。そのため本研究は、ホームページの画像が医学的所見を再現できるかどうか、および表示装置の性能差が回答者の判定結果に影響しないかどうかにつき、尿検査、血液検査、免疫学的検査、微生物検査、生理検査、病理細胞診検査において検証すると共に、その画期的効果の実証を目的とした。
【方法】 平成10年に後掲の科学研究費補助金を得て7大学9名の研究者で研究班を組織した。(1)29名の研究協力者を加え、一般検査、血液検査、微生物検査、免疫血清検査、生理検査、病理細胞診の各分野の典型画像を収集し、各種端末装置で表示させて画質の評価を行った。さらに試作中の超高精細液晶表示装置を借用し、追加実験を行った。(2)その結果、多くはスライド写真とくらべ遜色のない画質が得られ、十分実用的であることが確かめられたが、一部はより高い解像度を必要とすることが明かとなった。その一方で、表示装置に予想以上の機種間差を認め、色の再現性の相違などが判定あるいは診断に重大な影響を及ぼす恐れがあることが明らかになった。(3)そこで急遽研究計画を変更したうえ、「診断等価性」という独自概念の導入によりその問題に対する技術的対処法を考案し、研究代表者名で特許出願した。(4)またこの問題は臨床検査領域だけで生じるとは限らず、医療全体にかかわると考え、「第1回デジタル医用画像の「色」シンポジウム」を共催した。さらにその成功を受けて、「第2回デジタル生体医用画像の「色」シンポジウム」が開催されると共に、新たにデジタルバイオカラー研究会(
http://biocolor.umin.ac.jp/)が設立された。(5)30名の研究協力者を加えて、一般検査、寄生虫検査、血液検査、染色体検査、微生物検査、免疫血清検査、生理検査、病理細胞診の各分野の典型画像を収集し、第3回形態検査インターネットサーベイを実施した。(6)これらの研究成果は国内外の学会や学術雑誌あるいは専門医会誌で発表、展示すると共に、研究班のホームページ(
http://survey.umin.ac.jp/)で逐次詳細に公表した。
【結論】 形態検査の精度管理にインターネットは大変有用であるが、一部の画像では問題が生じるため予め確認を要する。
(本研究は平成10〜11年度 文部省科学研究費補助金基盤研究(C)課題番号10672172 「インターネットを使って形態学的検査のコントロールサーベイを実施する研究」による)
【文献】 西堀眞弘編:
上記補助金 研究成果報告書、2000年