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第18回医療情報学連合大会 18th JCMI (Nov., 1998)
2-K-7-7

電子メール新聞を中心とした臨床検査医のネットワーク化について

西堀 眞弘1)
日本臨床検査医会 情報・出版委員会1)
東京医科歯科大学医学部附属病院検査部1)

The Newspaper Distributed Using E-mails for Promoting
the Network Activities of Clinical Laboratory Physicians

Masahiro Nishibori1)
Committee of Information and Publications, Japanese Association of Clinical Laboratory Physicians1)
Clinical Laboratory, Tokyo Medical and Dental University, Medical School1)

(mn.mlab@tmd.ac.jp)

first edition<Last updated, Dec. 11, 1998>
(revised portions from the first edition will be marked with [revn] signs.)


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Abstract

The activities of clinical laboratory physicians, with specialized in laboratory medicine, include laboratory dicision making, management, quality assuarance, consultation, education, supervising commercial laboratories, etc. Today, revolutional progress of medical technologies and rapid changes of the medical policy force us to have quick and frequent communication which can be hardly done by printed matter. So we adopted the e-mail system not only to distribute our newspapers, but also to contribute manuscripts and to proofread them. As a result, a great reduction of a time and costs of total procedures was achieved and niether technical nor ethical problem has been reported yet. Besides, we are now free from the obligation to make the amount of news articles constant. In conclusion, the e-mail system at present is considered to have enough reliability and security for this application, and it may take the place of our news 'papers' in near future.

Keywords: network, e-mail, newspaper, clinical laboratory physician


Contents

1.はじめに
2.システム構成と運用方法
3.結果
4.考察
 謝辞
 参考文献
(初版からの改訂内容)


1 .はじめに

 臨床検査医の実地医療活動は、検査診断支援、検査業務管理、コンサルテーション、外部精度管理指導、検査センター指導監督、卒前・卒後教育など多岐に渡るうえ、最近の医療の技術革新や医療行政の急転換に対応するため、専門医間のタイムリーできめ細かな情報交換の必要性が著しく高まっている。しかし会報や会誌等の旧来のメディアだけでは、コスト面および迅速性の点で、十分な対応が困難となりつつある。そこで日本臨床検査医会では、ホームページによる情報伝達[1]に加え、電子メール新聞を創刊し、その実用性と効果につき検証したので報告する。


2.システム構成と運用方法

 編集は日本臨床検査医会 情報・出版委員会の情報部門が担当し、会誌編集主幹、会報編集主幹およびホームページ編集主幹と緊密に連携しつつ記事を集めた。掲載内容は事務局や各委員会からのお知らせ、行政や業界の動静および会員向けのニュース、時事解説、新規収載検査の解説、臨床検査Q&A、論壇、声の広場、人事・求人情報、特別寄稿などで、他のメディアとの重複掲載も許容した。新聞として認知を得るため、「JACLaP WIRE」という名称を付してタイトルや記事の体裁を厳密に定め、記事が入る都度随時発刊する不定期刊とした。これらの編集方針はホームページ上に公開し、会員から広く意見を求めて反映させた。
 コスト削減を追求するため、編集委員は全員電子メールアドレスを取得し、校正や意見交換、最終校閲等は全て電子メールの回覧により行った。また講読者への配布手段は電子メールのみとし、アドレスを持たない会員には手近な購読者からコピーを回覧してもらうことにした。またバックナンバーのリクエストにはホームページで対応した(図1)。なお発送時には、メーリングリストで問題となるようなジャンクメールの一斉送付を防止する技術的対策を講じた。

図1 バックナンバーページ(上:インデックス 下:本文)


3.結果

  1. 1998年4月9日のプレビュー号を皮切りに、同年8月末までに第4号まで発刊した。
  2. 480余名の会員のうち購読者は8月末の時点で125名であった。
  3. 執筆者に対しできるだけ電子メールによる入稿を依頼したところ、記事の95%以上が電子メールで入稿され、入稿から発刊までの時間は最短4時間であった。
  4. 記事の内容とそれぞれの本数は表1のとおりであった。
  5. 記事のうち他のメディアにも掲載されたものは表2のとおりであった。
  6. 各号のデータ容量は15K〜35Kバイトであった。
  7. インターネットへの接続費用を除き、講読者への送付には全く費用がかからなかった。
  8. 発送先アドレスのリストを作成する時間を除き、発送にかかる時間は10分以内であった。
  9. アドレス誤記を除き技術的トラブルは無かった。
  10. プライバシーやセキュリティーに関する苦情やトラブルは無かった。

表1 記事の種類と本数
記事の種類記事の数
特別寄稿
お知らせ
ニュース
新規収載検査の解説
臨床検査Q&A
論壇
声の広場
人事消息
求人情報
訃報
編集後記
1 
13 
16 
16 
17 
1 
2 
1 
1 
1 
5 

表2 他のメディアへの重複掲載
日本臨床検査医会の
発行する他のメディア
電子メール新聞と重複
掲載された記事の本数
ホームページ
<http://www.jaclap.org/>
46 
機関紙[JACLaP NEWS]
(隔月刊)
28 
機関誌[Lab CP]
(年2回発行)
0 


4.考察

 同様の目的による電子メールの利用形態としてメーリングリストがあるが、組織として記事内容を管理する必要があること、リストサーバの管理が煩雑であること、配布数がメールソフトで対応できる範囲内であることから採用しなかった。
 今回の試みにより、電子メール新聞の十分な実用性と、印刷物と比較して記事入稿から発刊までの時間短縮、編集作業の効率化、記事分量の自由度、印刷や郵送経費の節約が大きなメリットとして実証された。また発刊頻度の高いメディア程重複記事が多くなっており、特に機関紙は今後電子メール新聞に置き換わっていく可能性が高いと思われた。
 今までのところトラブルは経験していないので、本用途には現時点で得られる電子メールの信頼性およびセキュリティで十分と考えられた。但し会員の4分の1程度しかいない購読者の拡大、画像情報への対応、発刊頻度の増加による編集作業の負担増の回避等が今後の課題である。 本事例のように、専門医集団が発刊し実地運用されている電子メール新聞は、著者の知る限り世界初であり、今後急速な利用拡大が見込まれる。


(電子メール新聞の編集にご協力いただいている日本臨床検査医会会員諸氏に深く感謝いたします)

参考文献

[1]
西堀眞弘:インターネットを使って臨床検査医による診療支援活動をネットワーク化する研究 −日本臨床検査医会有志によるホームページの試験運用について−、第16回医療情報学連合大会論文集、634-635、1996.

初版(論文集掲載)からの改訂内容

なし

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