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登山技術講習会(スリング編)参加記録

2011年11月13日 モンベル名古屋店主催の登山技術講習会(スリング編)に参加した。9:30御在所ロープウェー乗り場集合。中道登山口の手前でスリングとは何か?その性能、構造、材質などの説明を受ける。1ニュートンは、1キログラムの質量をもつ物体に1メートル毎秒毎秒 (m/s2) の加速度を生じさせる力と定義されている。ニュートンは組立単位であり、基本単位で書き表すと N = kg・m/s2 (キログラムメートル毎秒毎秒)。地球表面において質量1キログラムの物体は約9.81ニュートンの力を受ける。100kg=1kNとして概算できるので、スリングやカラビナに記載されている22kN数字は22x100=2200kgの力に耐えられる安全設計であることを示す。「負ばれ岩」付近でザイルを張って岩登り、降りのトレーニング。15:30山頂に移動し山頂公園でツエルトを使った簡易担架の作製法を学ぶ。最後にコーヒーを御馳走になって講習会終了。


120 cmのスリング1本と安全環付きカラビナ1個のセットは、自分の安全のためばかりでなく、予期しない遭難者を救出するような状況でも役立つ汎用性の高い道具である。雨具、ヘッドライト、コンパスと同等の登山基本装備として持ち歩きたい。

スリングで簡易チェストハーネスを作る。


1.輪を右肩にかける。背中を回して左側の脇の下から輪と胸の前に引き出す。
2. 左の輪と右の輪と胸の前で交差させて、左右の手を持ち替える。左からの輪を引き出して左人差し指と親指で挟む。右からの輪を包むように下から回すと人差し指の場所に穴ができる。その穴に耳を通して下に出す。
3. 出した耳の輪にカラビナを通す。

スリングで人を背負う


「スリング」の語源を調べるとドイツ語のシュリンゲン(Shlingen)「巻き付く」という意味らしい。「スリング」は赤ちゃんの「抱っこ紐」の意味としても使われている。山で「スリング」で背負う練習をしたのは正当な用法と言えそうだ。ダイニーマ製スリングは従来の20 mm幅のテープスリングより幅が狭い7 mm幅のダイニーマスリングも強度は22 kN。従来のテープスリングではゲート付近に荷重が掛かるのに対し、ダイニーマスリングではその恐れは少なくインクノットをしてもまだ余裕があり、カラビナの強度を最大限に引き出せる。しかしダイニーマは摩擦抵抗が少なく融点が低い。したがって雑木などに支点を設けた時は滑りやすく、プルージックなどのフリクションノットに利用すると溶断の恐れが高い。背負うためには従来の20 mm幅のテープスリングの方が肩への負担が少ない。

スリングを握る


救助者も被救助者も単純にスリングの輪を指で持つだけでは、強い力で引っ張られるとスリングが抜けてしまう。写真のように手首にスリングを巻き付けて握れば体重も支えられる。

手を結ぶ


二人が握手するように手を繋ぐだけは滑り抜けてしまう危険性がある。お互いに手首を掴むように交差して手を繋ぐ。

ビアフェラータ(via ferrata、イタリア語で鉄の路の意味)


岩場に固定されているワイヤーや鉄はしごなどを使って安全に山登りをするスポーツ。単に「フェラータ」とも言う。

インクノット


結び目が緩まない。ロープの途中でカラビナを固定するなど使用頻度が高い。

安全環付きカラビナ


スクリューロック式とツイストロック式がある。ツイストロックは自動的に必ずロックがかかるメリットある。しかし回転摩擦が加わるとロックが解除されて開いてしまう危険性がスクリューロックよりは高い。ただし意識的にスクリューロック式はロックをかけないと安全環を使っている意味がなく、それを忘れるよりはツイストロック式は安全だ。(自称忘れっぽい)講師の腰にはすべてツイストロック形式のものがぶら下がっていた。
エイトノット


ほどける心配がない。間違った結び方をすれば、他人が見てすぐにわかる。スリングを中央に追加して結び、両側にカラビナを付けることでザイルへのアクセスの自由度が増して使い易くなる。2個のカラビナを短いスリングでつないだものを日本ではヌンチャクとよんでいる。因みに過去の事故からブーリン結びは間違えやすい上に場合に寄ってはほどけることもある危険な結び方と言われている。

ツエルトとスリングとカラビナで担架を作る


カラビナをツエルトの下に置いてスリングをインクノットで縛る。背の高さが異なる人が皆で担げるようにスリングの輪の長さを調整する。ツエルトは非常に軽く薄い生地でできているが引裂に強い太糸が入っているので、このような使いか方でも破れることがない。

スリングの収納方法


2011 年11月13日 登山技術講習会参加者(2枚の記念写真の合成)


山頂で講習会が終了した後に、皆で揃ってロープウェーで御在所を無事下山しました。三重県、愛知県の知多半島、名古屋市、尾西市、大阪のご夫婦など9名の受講者と2人の講師を合わせて合計11名で講習会が開かれました。その中に私も入らせていただきほんとうに楽しくスリングの使い方を学ぶことができました。自分は30年以上も登山経験がありながら、こんな単純で便利な道具を使いこなしていなかった。「少しのことにも、先達はあらまほしき事なり。」講師を勤めてくださった中村さま、高梨さま、一日ほんとうに有り難うございました。

三浦 裕
名古屋市立大学医学部分子医学研究所分子神経生物学(生体制御部門)准教授
名古屋市立大学蝶ヶ岳ボランティア診療班運営委員長


三浦裕エッセー目次
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(Last modification, November 15, 2011)