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2015年5月2日快晴。 午前6時に登山口から歩き始め、満開にアカヤシオが咲き誇る御在所岳を登った。登山道脇の足下にはフデリンドウが青く咲いてかわいい。バリエーションルートには人影は少なく、前尾根に取り付いていたのは、私たちのパーティ(Miura, Urakawa, Nnishie)の他にわずか2パーティのみだった。P7から登り始めて、P4滑り台、P3北壁スラブ&クラックルートをゆっくり楽しんでもP2櫓(ヤグラ)に到着したのが午前10時30分である。P2櫓(ヤグラ)の最初の終了点のあるテラスから、Nishieさんのリードで、さらに3mほど上の最上段まで登り詰めることができた。P1に抜けて伊勢湾を眺めながら休憩時間を楽しんだ。直射日光を浴びると暑い。しかし日陰に入ると涼しい風が吹いて寒い位の、ほんとう気持ちがいいクライミング日和だった。
伊勢湾には霞がかかって、やっと知多半島の形が分かる。御岳や中央アルプスの姿は見えない。気象庁の情報では黄砂の注意報は出ていないものの、下山して駐車場の自動車のフロントガラスを見ると、驚くほど黄砂で汚れていた。
アプローチシューズの代わりにVibram fivefingers SPYRIDON MRと称する5本趾の靴を使い始めた。足の趾5本ともすべて独立した素足感覚の不思議な靴である。クッション性が悪いので、普通の歩き方では下りで、踵から着地すると衝撃が足首や膝に直接伝わる感じで不快だ。猫のように静かに忍び足のように、足先で着地して足底筋肉から足全体をバネのように使いながら歩く必要がある。足首が固定されていないので捻挫の危険性を心配した。しかし着地した瞬間に足裏で微妙な岩の凹凸や傾きを感じることができるので、むしろ着地で失敗がない。足を下ろして足先を石にぶつけると痛いから、慎重に地面の性状を目で確認してから着地するように神経を集中させるので、かえって捻挫の危険性が少なくなるように思う。私は今回国見尾根の長い下り坂で、自分の足先の5本の趾が、自然に根っこを掴むのに気がついた。自分の足の5本の趾で地面を掴もうとする自分自身の身体感覚はとても新鮮だった。脳に割り当てられている足の趾の運動・感覚を司る大脳神経皮質の面積は、手の指と比較したら1/10以下である(脳神経外科学者Wilder Penfield 1891-1976の発見)。足の趾の領域は狭いので、手のように細かい作業をすることが難しい。人間は自らの足の趾のすばらしい能力を無視して高性能の靴を発明し、足の感覚をどんどん衰退させた。靴が進化すればするほど、本来の足の筋肉が作り出すクッション性も弱まった。しかし、Vibram fivefingersで素足感覚で地面を感じながら歩くと、楽しさが込み上げてくるから不思議だ。眠っていた原始の脳が活性化したのかな?
2015年5月2日
三浦裕(みうらゆたか)
Yutaka Miura, M.D., Ph.D.
Associate Professor at Molecular Neurosciences
Department of Molecular Neurobiology
Graduate School of Medical Sciences
Nagoya City University
名古屋市立大学大学院医学研究科分子神経生物学准教授
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(Last modification May 4, 2015)