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捻挫や骨折の応急処置は、RICE(Rest, Icing, Compression, Elevation)が基本である。しかし、登山行動中は、安静(Rest)を保つことは難しい。私は山岳会メンバーと一緒に2017年8月13日に剱岳のチンネ左稜線(12ピッチ)を完登した。その翌日、ところどころシュルンドの割れ目が走る長次郎雪渓を慎重に下り、真砂雪渓を登り返して別山乗越しに到着した。そこから先は一般登山道で安全だ。天気もよく雷鳥沢を目下に見渡せた。ところが何の危険もないと思っていた場所で捻挫した。
Fig. 1. 捻挫した受傷現場。 雷鳥沢まで見渡せる。X: 別山乗越しから雷鳥沢へ少し下り始めた受傷地点。午前11頃に、登ってきた登山者に道を譲ろうとして左足を浮き石に乗せたのだろう。足関節が内反した瞬間に激痛が走った。まったく危険のない一般道で油断した。私はその場で動けなくなったが、同行した山岳会メンバーが私にザックを下すことを促して中身を取り出して重荷を軽減してくれた。両手にダブルストックを持って、右足で体重を支えながら、左足に負担をかけないように下山した。パーティを組んだSatoshiさんとManoさんの協力のおかげで受傷現場(写真のX印)から室堂バスセンターまで約3時間で下山できた。
Fig. 2. 左足首の浮腫受傷した当日に下山完了して、山仲間と「ホテル森の風 立山」の温泉に入った。私は冷たい水に足つけて冷却し、湯船に浸かるのは止めた。帰路はSatoshiさんの自家用車の前の座席を倒して、後部座席から足を前に伸ばしたままの姿勢で、名古屋の自宅まで送っていただいた。移動中ずっと足を挙上(Elevation)ができたことは捻挫の初期治療としてたいへんよいことだ。帰宅した後も、座布団を数枚重ねて左足を挙上(Elevation)した状態で休養した。上のFigure 2の写真は、受傷の翌日の朝に撮影した。
Fig. 3. 受傷翌日の内出血斑。左足を挙上(Elevation)したま就寝したけれども、朝になっても左足関節は腫脹したままで、歩行時に痛みがあった。念のために大学病院整形外科を受診してX線検査を受けることにした。大学病院に出向くには、自宅からタクシーで病院に移動する必要がある。足を下げていると、左足が充血して痛みが出る。診察とX線検査が終わって、最後に薬剤部で薬が処方されるのを待っている待合室で、患足を観察した写真がFigure 3である。 その日の朝に撮影したFigure 2と比較すると浮腫が増強して、内出血班が拡大していることがわかる。帰宅する前に、名古屋市立大学病院リハビリセンター技師長のMuramatsu先生に相談したところ、弾力包帯を巻いて、松葉杖を貸していただいた。翌日に、理学療法士のSakurai先生の助言で主治医に相談して左足首を固定する装具を装着した。就寝中に装具を外して寝たところ、寝返りを打つ際に患足を捻ったらしく、激痛で目が覚めた。就寝中こそ身体の動きを制御できないので、装具で患足を固定するべきだと悟った。
Fig. 4. MRI検査結果:左前脛距靭帯損傷左前脛腓靭帯と左後脛腓靭帯は、MRI検査結果で均一の黒色(低輝度)で描出されている。しかし左前脛距靭帯は、連続性が断たれて白い斑点が見える。靭帯が傷害された部分に関節液または血液が組織内に侵入している画像である。骨周囲の高輝度の部分(赤矢印)は、出血また浮腫が広がっていることを示している。2017年8月24日:受傷後10日目のMRI画像。
三浦裕(みうらゆたか)
日本登山医学会認定 国際山岳医
Yutaka Miura, M.D., Ph.D.
Associate Professor at Molecular Neurosciences
Department of Molecular Neurobiology
Graduate School of Medical Sciences
Nagoya City University
三浦裕エッセー目次
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(Last modification August 28, 2017)