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アンカー構築の失敗
以下に示した2事例は、私たちの山岳会のメンバーが経験した失敗例である。あまりにも単純なミス事例である。しかし、いずれも一瞬でアンカーが完全に解除されてノービレー状態になる致命的な事例であるので、自戒の意味を含めて公開する。
Fig.1. Girth Hitchの固定が一瞬で解除された
登山歴20年を超えるベテランのIさんは、御在所P7取り付き点でのアンカーを構築した。スリングが長過ぎると感じて二重に束ねてからGirth Hitch(タイオフ、カウヒッチ)をしたつもりだった。体重をかけた瞬間に、アンカーに付けたビレーが抜ける事件が起こった(Fig. 1C)。メインロープを結びつけるカラビナを間違えているのだから、抜け落ちて当然である。
Fig.2. 流動分散からすべてのカラビナが一瞬で解除された
小川山のマルチピッチを3名で登っていた。リードが流動分散でアンカーを構築した。セカンドがセルフビレーをとった場所(Fig.2Bの2)が、リードが構築したアンカーのカラビナ(Fig. 2Bの1)が通過している穴からずれていた。このトラブルは、スリングが捻れていたので、カラビナをかけるべき穴がよく見えない状況から発生した(Fig.2A)。カラビナの掛け間違いは、いい加減なスリングの掛け方から始まっている。リードが登りはじめるためにアンカーのカラビナを外した瞬間(Fig. 2C)に、手品のようにすべてのカラビナアンカーが解除される事件が発生した(Fig. 2C、2D)。もしフォロワーがアンカーにしっかり体重でテンションをかけた状態で、ビレーしている状況だったら、カラビナが外れた瞬間にバランスを崩してビレーヤーは転落し、リードも引きずられて転落して3人全員死亡していた可能性があった。幸い三人(Iwata, Horio, Itho)全員が安定したスタンスに立っていたので転落を免れた。
三浦裕(みうらゆたか)
日本登山医学会認定 国際山岳医
愛知県山岳連盟所属 チーム猫屋敷
日本山岳会東海支部 技術向上委員会委員
Yutaka Miura, M.D., Ph.D.
Associate Professor at Molecular Neurosciences
Department of Molecular Neurobiology
Graduate School of Medical Sciences
Nagoya City University
三浦裕エッセー目次
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(Last modification August 28, 2017)