第二話:発現(98/3/27)
畳を開けた。手紙の通り板を外すと、一冊の手帳が出てきた。送られてきたカギで留め金をはずすと、中には文字がびっしりと書き込まれていた。日記のようである。最後の日付を見る。1X月XX日。Sの死ぬ一週間前。彼女の言葉は意外であった。
「やっぱり何かあったのですね。」
屈託なく冷淡な態度。私は疑問よりも先に所在無さを感じる。事故じゃなかったんですか、そう聞いていたんですが。狼狽する風でなく彼女は言う。
「警察からはそう聞いてます。でも事故にしては随分変、変な事が多いんですよ。」
変とは?
「だって事故っていうのはたまたま起こるから事故っていうのでしょ?だから起きるその時まで分からないものじゃないですか。なのに…」
彼は知っていた?
「それはわからないわ。私、兄じゃないですから。でも、この部屋も片づけてあったし、最近まで親戚にもお金を返して回ってたし。」
兄じゃない?
「そう。私は兄じゃないです。だから何を知ってたなんか分かりません。あなたの方がよく知ってるのではないですか。」
私もわからない。あなたは知りたくないのか。
「別に。」