ハノイとハロン湾の観光(2001年9月8日・9日)
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 訪書した漢喃研究院は金曜午後と土日の閲覧ができない。それで今回のベトナム調査訪問のリサーチビザ取得に尽力いただいた河口氏の推薦で、土日をハノイ市内とハロン湾一泊二日の豪華観光旅行(総額約300米ドル)をしてみた。河口氏は日本企業の従業員等への日本語研修をハノイで行っており、ベトナム通の彼が薦めるだけあって、これだけでもベトナムに来た価値が十分あったと思われた。

 東京学芸大に1年留学したため今、大学5年のVanAnhさんがアルバイトで二日間の専属通訳。運転手つきの専用車で土曜の朝ホテルを出て、午後3時頃まで文廟・西湖・歴史博物館・クアンタイン寺・チャンコック寺・ゴックソン寺・民族学博物館をまわった。ベトナムの歴史など一切知らなかったが、フランス統治以前はずっと中国の侵略と闘争してきたことが簡単ながらよく理解できた。

 下写真左はいずれかの寺の境内で見かけた不思議な形状の竹。VanAnhさんの話ではどこにでもある竹だそうだが、この時期に竹の子が出ていたのも興味深かった。写真右は西湖の畔にあった真武(鎮武)観という廟の門。街頭の看板等はすべて声調記号付きのアルファベット表記だが、このように寺院など伝統的建物には漢字が残っている。私は真武の文字で四神の真武のことで、西湖の北を守る廟と思い撮影したが、実際は鎮武を略したものと中に入って分かった。

 ハノイから車で3時間半かけてハロン(Halong)の町に夕方到着。ハロンを漢字で書くと下龍というのをVanAnhさんから車中うかがったが、その中国発音はXia Longなのでやはり音韻に共通性が高い。中国大陸からの観光客が一番多いとかで、町中に中国簡体字の看板があるのには少々ビックリ。ホテルに到着後、夕飯はVanAnhさんが以前食べたことがあるという付近の海鮮料理店で、新鮮な貝などをいただいた。

 翌日は朝8時から50人は乗れそうな観光船を私一人で借り切り、4時間のハロン湾観光。河口さんは中国の桂林に似た景色で、洞窟があるとしか説明してくれなかったが、とんでもない規模の絶景で、ただただ絶句だった。下写真左は出航直後で、こんな大きな舟を借り切り、二階のデッキでやや緊張気味の私。写真右は二階のデッキ船首側から撮ったもので、絶景のなか左が通訳のVanAnhさん、右が服務員・コック・売り子兼任の若い女性。彼女が中国語を上手に操り土産物を勧めるのにも驚いたが(その売り上げだけが彼女の給料とか)、作ってくれた昼食の魚介料理すべてが今回のベトナム期間中で一番の美味だった。

 VanAnhさんからハロン湾は世界遺産に指定されていること、1900以上の島があること、いくつかの島には洞窟があり、入って見ることができることは事前に説明されていた。しかし観光客に公開されているという一つの島の洞窟に入って驚いた。巨大としか形容できないレベルの鍾乳洞なのだ。中は台湾資本と技術で歩道が整備されており、大陸中国人・台湾人・韓国人の順で団体客が多く、個人旅行者はフランス人・アメリカ人・日本人という順だろう。水太りの私は湿度100%のため全身汗だくになったが、下写真左のように鍾乳洞の巨大さにただ呆然。2番目に入った鍾乳洞は後楽園ドーム以上の大きさで、天井には大きなコウモリが群れ飛び、まさに異世界に迷い込んだ雰囲気になる。また出口付近の岩石の3箇所に、「大正十三年○○丸探訪」などの大きな落書きあったのにも驚いた。
 ハロン湾の景色は桂林同様、石灰質の地形が浸食されて出来たということが鍾乳洞を見て分かった。しかし河と海の違いはあれ、桂林を遙かに上回る規模は間違いない。その雄大さと絶景を写真や文字で伝えるのは到底不可能。下写真左の中央にある親指状の小島に近接したとき撮ったのが写真右で、手前の小舟と比較すれば少しは規模が理解いただけるだろうか。湾のほんの一部を周遊しただけだったが、軽い曇天で涼しく、風もなく、まさに夢幻の仙境に遊んだと形容するしかない。ベトナム戦争しか頭になかった私にとって、この観光は認識を改めさせられた驚きの連続だった。