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茨城大学社会連携事業会会報『茨苑』17号11頁、2010年9月


第2回日中韓医史学会合同シンポジウム
および第111回日本医史学会学術大会

人文学部  教授  真柳 誠

 さる6月11日〜13日、標記のシンポジウムと学術大会が水戸キャンパスで開催された。実行委員長は教育学部の瀧澤利行教授、大会長は真柳が任じ、名誉会長に本学の池田幸雄学長を迎えた。シンポジウムは本学および中華医史学会・韓国医史学会の共催で、内藤記念科学振興財団・財団法人日中医学協会・福武学術文化振興財団より助成をいただいた。学術大会は本学の後援、社団法人茨城県医師会・同歯科医師会・同薬剤師会・同鍼灸師会のご賛助、また水戸コンベンションビューローのご協力もいただいた。スタッフは本学学生と卒業生にお願いし、その仕事ぶりは多くの参加者から賞賛された。

 11日は大学会館を会場に、「越境する伝統、飛翔する文化―漢字文化圏の医史」をシンポジウムのテーマとした。これは日本・韓国・ベトナムが中国医学を受容しつつ、固有の体系を形成した歴史の検証が目的である。日本以外の報告者と座長は、韓国と中国から各4名、アメリカから1名を招聘した。また報告論文の全文を日中韓3言語に翻訳し、英文抄録も加えた330頁の論文集を発行、全参加者に配布した。当日は通訳なしで、計10の報告と討論すべてに日中韓3言語のパワーポイントを同時放映し、大方の理解を得ることができた。報告者・座長を含めた参加者は、日本104・韓国24・中国13、アメリカ・ドイツ・オーストラリア各1の計6カ国144名である。

 12日と13日は人文学部講義棟を会場に学術大会が開催された。会長講演「日韓越の医学と中国医書」および鈴木暎一本学名誉教授の特別講演「水戸藩の医学と医療」のほか、中韓医史学会員も含めた一般口演が計100題報告された。シンポジウムも加えた参加者は全282名の盛会となった。

 今回の国際シンポジウムと大会により、千年を越す漢字文化圏の交流で共通の医療文化が形成されていた現象、それを基盤に各国で独自の発展を遂げた歴史認識が共有されただろう。これは新たな研究の方向性を示すものである。


    第2回日中韓医史学会合同シンポジウムの様子    第111回日本医史学会学術大会の様子