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変化する社会の中で創造的な大学づくりへ

−「中間まとめ」から「答申」への分析・批判と壮大な議論を−

98年度学術研究教育部・真柳誠(人文学部)


 さる98年12月8日(火)午後5時30分より、地域総合研究所3階研修室にて茨城大学教職員組合の教育研究シンポジウムが開催された。今回の上記のテーマによるシンポジウムは、97年10月の文部大臣諮問「21世紀の大学像と今後の改革方策について」を受け、大学審議会が98年6月に「中間まとめ」を公表したこと。さらにそれに対する関係団体の意見を大学審議会が集約し、10月26日に文部大臣へ答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」を提出したことに対応し、第一部の講演、第二部の討論の順で開催された。概要は以下のようである。

 1)まず田切美智雄委員長(理学部)から開会の挨拶とともに、斉藤安史氏(群馬大・工学部)と田村武夫氏(本学・人文学部)の両シンポジストの紹介があり、ついで高橋正樹書記長(理学部)から次の主旨説明がなされた。

 2)いま大学は曲がり角に立たされており、大学審答申の制度化が進行しつつある。その中で独立行政法人化の最大ターゲットが国立大である。これは防衛大学化であり、トップダウン化であるが、憲法および教育基本法に背く。また必ずやリストラを招くことになるので、いま原点に立脚して考える必要がある。

 3)最初のシンポジスト・全大教中執の斉藤氏は「大学審答申について」の演題で、現時点での各大学教職組の対応情況、独立行政法人化・任期制・運営協議会設置などを含めた今後の進行見通し、これへの全大教の対応方針などについて配布資料に基づき話された。当配布資料の全文は後付する。

 4)ついで本学からのシンポジストとして田村氏が「地方大学のありかた」の演題で、「答申」は教育論に立脚するが研究論がない、大学のランク付け・選別化を意図、教授会・評議会の権限を制限列挙化、学部教育の教養化、などの側面について話された。さらに教員および2400人の学生に対するアンケート結果から、1年次の教養教育への満足度が2・3年次生になると計80%にまで高まることなどを分析し、「答申」との関連を報告された。このアンケート結果と分析を含めた配布資料、「大学教育の現状と大学審答申−教員・学生の教養教育アンケート結果を素材に−」はB4で7枚に及ぶものであり、アンケート結果を除いて採録させていただき後付する。

 5)講演後は第二部として出席者の自由討議に移り、「答申」への分析、全大教への要望、教職組の具体的対応方針等について意見が交わされた。また本学教職組として今後どうあるべきかについても、出席者から現状評価を含め活発な意見が出された。

 6)本シンポジウムにより、大学審答申という切迫した問題に我々がどう対応してゆくべきかについて、限られた時間ではあったが多くの情報と示唆が与えられたと思う。時宜を得た、しかも深刻なテーマであったため参加者からの発言も多く、開催の目的はまず達成されたであろう。

 しかし全組合員数あるいは教職員数からすれば、参加人数は必ずしも十分なものではない。「答申」自体が教職員の話題にのぼることが少なくないにもかかわらず。とりもなおさずこれは教職組の凋落傾向の反映であり、存在意義と魅力が失われつつあるためではなかろうか。人生初めて組合に参加したと同時に、学術研究教育部執行委員として本シンポジウム開催に参与したが、とうてい任は全うできるものではなかった。この点においても反省しきりである。

 最後に、ご多忙にもかかわらずご講演いただいた斉藤氏と田村氏、またご参加いただいた組合員の方々に、衷心より御礼申し上げたい。