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友部和弘・真柳誠「中国における日本伝統医学受容の史的検討」
(日本東洋医学会第44回学術総会、1993年6月12日、仙台)『日本東洋医学雑誌』43巻5号153頁


中国における日本伝統医学受容の史的検討

友部和弘、真柳誠(東京・北里研究所附属東洋医学総合研究所  医史文献研究室)

[目的]近年は中国から伝統医学関係者の来日が増加し、中国における日本伝統医学への関心が高まっているように見受けられる。そこで中国における日本伝統医学の受容状態について、客観性が比較的高い文献数から史的検討を加えることにした。

[方法]中国(大陸、台湾)で復刻ないし翻訳の形式で出版された日本伝統医学文献の記録を、入手しうるかぎりの資料から抽出した。次に1979年以前の出版物に年代を限定し、各文献を分野・著述年代・出版年代・出版地でそれぞれ分類、その書数を統計して比較検討した。

[成績]分野別出版総数:大陸では方書>針灸・経穴>傷寒・金匱>薬物>医論・医案>その他>内経>指圧・按摩の順であった。台湾では方書>指圧・按摩>その他>針灸・経穴=薬物>傷寒・金匱=医論・医案=内経の順であった。年代別出版総数:大陸でのピークは高さが1930−39年>1950−59年>1880−89年の順で認められた。台湾でのピークは高さが1970−79年>1940−49年の順で認められた。分野・年代別出版数:数量の多い大陸についてみると、ほとんどの分野で年代別出版総数と同一年代に3回のピークが認められた。しかしピークの高さ順は、年別出版総数のそれと一致する分野としない分野が認められた。著述年代別出版総数:数量の多い大陸についてみると、全体で19世紀末前と20世紀以後の書は1.3:1.0 の割合であった。著述年代・分野別出版数:大陸では針灸・経穴と薬物のみ20世紀以後に著された書の割合が高く、他の分野は19世紀末前に著された書の割合が高かった。台湾では、ほぼすべてが20世紀以後に著された書であった。

[結論]中国における日本伝統医学文献の出版物は、大陸と台湾で分野・流行時期および原著の著述年代がまったく異なっていた。大陸での流行は政治社会状況と密接にリンクし、針灸・経穴と薬物の分野は近現代の著作が好まれていた。