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真柳誠「江戸以前全医学著作のインターネット検索」『日本医史学雑誌』45巻2号292-293頁、 1999年4月

江戸以前全医学著作のインターネット検索

真柳 誠

 インターネットの学術利用環境の整備は世界各国が競争しており、日本においてもここ一〜二年で急速に普及してきた。その結果、数多くの学術データベースが無料でも公開され、厖大な情報が即時に入手できるようになってきている。これら情報はその場で印刷できるのみならず、著作権問題が発生しない範囲で自己のワープロ等に取り込み、加工することも不可能ではない。

 現在、医史学研究に利用できる情報を公開しているホームページは、世界中に無数といっていいほどある。日本でも日本史・日本文学・考古学などの分野で、様々な機関・個人がデータベースや書物・論文の全文ないし一部を公開しており、それらの内容を一文字レベルで検索することすら可能となっている。そして昨年、かねてより期待していた『国書基本データベース』(著作篇)が、ついに試験的ながら文部省国文学研究資料館のホームページ上で公開された。その概略と検索結果を簡単に報告したい。

 江戸時代までの著作を調査・研究する際、基本となる書誌を網羅的に与えてくれるのは岩波書店の『国書総目録』をおいて他にない。これに補助的な情報を与えるのが『古典籍総合目録』(岩波書店刊)で、国文学研究資料館が『国書総目録』の続編として編纂した。同資料館が試験公開した当データベースは、『国書総目録補訂版』『古典籍総合目録』と以後逐次追加された著作を統合し、江戸時代までの約五〇万著作について、所在情報を除く全項目が収録されている。著作権は国文学研究資料館と岩波書店が保有し、現在は検索結果の範囲で利用が許可されている。

 さて医学著作の検索であるが、国文学研究資料館のページhttp://www.nijl.ac.jp/にまず行く。そこの「電子資料館実験」をクリックして電子資料館のページに行き、さらに「国書基本データベース著作篇」をクリックすると検索のページになる。ここから登録のページに行き、名前・所属・電子メールを記入して提出すると、検索利用の「合い言葉」が自動的に与えられる。検索ページに戻り、この合い言葉を記入したうえ、分類に「医学」と記入、結果の表示を「詳細情報を一括表示」、ソートを「名称のよみ順」に選択し、「検索実行」をクリックする。

 すると「【検索結果】10439 個が見つかりました。数が多過ぎるので、最初の3000個だけ出力します」に続き、第一書の「WORK[79174]【書名】愛育茶譚(あいいくさだん)K 1、【巻冊】一冊、【別書名】[1]愛育茶談(あいいくさだん)・[2]愛育総説(あいいくそうせつ)、【分類】医学、【著者】[1]桑田/立斎(くわた/りゅうさい)作者へ(別称No=2)著・[2]佐竹/永海(さたけ/えいかい)作者へ画、【成立】嘉永六刊」から、第三〇〇〇書の「WORK[2327868]【書名】牛医方(ぎゅういほう)K 1、【巻冊】一冊、【分類】医学」までの書誌情報が得られる。

 以上より現在、検索可能な江戸時代までの全医学著作は計一〇四三九件だったことが明らかになった。さらに第三〇〇〇以下は著作名で五十音順に検索し、最後の第一〇四三九書まで同様に情報が得られた。各書にある「作者へ」から、「作者データベース」の検索もできる。また「本草」で同様に検索した結果、『秋草 (あきくさ)』から『和薬通用 (わやくつうよう)』まで全一八〇三件あり、各書の情報も得られた。

 かつて『国書総目録』と『古典籍総合目録』のすべてを、このように正確に調査することは到底不可能だった。今後は当データベースの CD-ROM 版を岩波書店が刊行し次第、著作権に抵触しない範囲で医学書・本草書の全情報を年表・索引等に整理し、広く利用可能な形で斯界に発表したいと考えている。

(茨城大学人文学部/北里研究所東洋医学総合研究所医史学研究部)

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