昨年九月に十日ほど、ベトナム・ハノイ市にて古医籍調査の機会を得た。訪書したのはベトナム社会人文科学国家センターに属する漢喃研究院である。ここで調査したのは『ベトナム漢喃遺産』CATALOGUE
DES LIVRES HANNOMという蔵書目録が東洋文庫にあり、予備調査が可能だったせいもある。ちなみに喃とは日本の国字同様にベトナムで作成された漢字式の文字で、当院は漢字と喃字で著された古典籍等を所蔵し研究している。
当院のNguyen Ngoc Nhuan阮玉潤副院長によると、古典籍は他にハノイの歴史院図書館・総合大学図書館・文学院図書館・国家図書館(古く重要な古典籍中心)、またホーチミン市にもある国家留貯局(十九世紀の文物中心)等にある。各々目録はあるはずだが、目録を交換することはないという。それで当院に他機関の蔵書目録はなかった。蔵書中の最古版は一五一七年刊『国朝形律』で、いただいたコピーを見ると、字体は明の成化以後・嘉靖初期に似ていた。Huang
Van Lau黄文楼教授の話では他に社会科学通訊院に数万タイトルの中国・日本古典籍があり、中には中国佚書もあるという。ただし目録は未完成で、ベトナム人にもまだ非公開とのことだった。