自動車も薬も同じ国

判決云々はどうでもいい.この記事の核心は自由薬価制度を採る米国では,薬価が決まるプロセスは透明性がゼロなのに対し,我が国では完全に透明である.その透明度が公開度にも影響するということだ.
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米連邦地裁 薬価のテレビCM放映ルール無効の判決 ミクスオンライン 2019/07/26 03:50
米コロンビア特別区連邦地裁は7月1日、HHS(保健福祉省)が、製品のCMを放映する場合、薬価情報を含めることを義務付ける規制について、HHSが連邦議会の承認を得ていないので無効であるとの判決を下した。米一般紙「Washington Post」、医薬専門誌「Fierce Pharma」などが報じた。

HHSは、薬価高騰問題を重視するトランプ大統領の意向も踏まえ、今年7月からテレビCMで医療用医薬品の薬価情報(リスト薬価)を公開することを義務化する規制を設け、7月2日から発効予定としていた。公開する薬価は、保険者へのリベートやキックバック、値引きなどは含まれていないが、消費者には自己負担額の目安や薬価高騰に歯止めがきくのではないかと期待されていた。

しかし、米メルク社、イーライリリー社、アムジェン社の3社および全米広告業協会(ANA)は、コロンビア特別区連邦地裁に対し、規制が連邦議会の議決による承認がされておらず、HHSの権限を逸脱しているため、無効であるとの訴訟を提起した。

同連邦地裁のAmit P Mehtha判事は、「同規制は、医療用医薬品の価格を抑制する有効なツールであろう。しかし、高騰する薬価問題がどんなに面倒でも、HHSは議会が承認した以外のことはできない」とメルク社らの主張を認め、同規制は無効との判決を示した。一方で、企業3社およびANAによる、「同規制は、強制的な言論に相当するもので、憲法修正第1条(言論表現の自由)を侵害するもの」との主張は退けた。連邦地裁は、HHSの規制の動機については問わず、製薬企業が薬価を公開する是非についても触れなかった。

HHSのCaitlin Oakley報道官は、今回の判決について、「政権は、地裁の判決に失望した。今後、司法省と協力して、控訴するかどうかを検討していく」とコメントした。
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そもそも米国の薬価は,医師の処方箋が必要な医療用医薬品でも,自動車の値段同様,製造販売業者が自由に決められる.そして広告も自動車同様,Direct-to-Consumer (DTC) 広告として直接消費者に対して宣伝できるようになっている.だから,薬の値段を広告に入れようが入れまいが会社の勝手である.

そもそも,広告に薬の値段を入れるか入れないかなんて,どうでもいいことだ.そんなことで第二第三のマーティン・シュクレリの出現を防げるとでも思っているとしたら,その保健省の役人には,早速「You're fired」との御託宣が下るに違いない.

参考→人民の敵No.1は実は鼠小僧だった?−米国薬価制度の意味−

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