テコビリマトの承認を巡って

まるで理解できないテコビリマトの日本の承認(日経メディカル 2025/2/12)
を拝読しました。以下を断った上で背景事情の説明です。

●あくまで公開情報に基づいた推測であること
●私のPMDAの在職は2003年-2007年という(諸々の事情が正に日進月歩をであることを考慮すれば)「大昔」であること

まず、日本国内での医薬品製造販売承認申請は、日本の厚生労働省から製造販売業許可を得ている製薬企業しかできないこと(薬機法:第四章 医薬品、医薬部外品及び化粧品の製造販売業及び製造業 第十二条 製造販売業の許可)をお心得ください。

一番の問題は、JYNNEOS(日本語で一番近い発音は「ジニオス」だそうです)を開発したBavarian Nordic日本での医薬品製造販売業許可を得ていないことですBavarian Nordicには日本でジニオスを売る気がさらさらないの です。、そもそもこれは企業判断であって、日本の厚生労働省にとってはどうにもなりません。なお、日本の薬価制度や市場規模などの問題から、企業にとっての魅力、つまり利益を出せる見込みがなければ、承認申請はおろか、そもそも製造販売許可申請さえしないという判断は決して例外的ではありません。(余談ですが、Bavarian Nordicの本社はミュンヘンではなく、コペンハーゲン北方のHellerup ヘロプにあります)

「ジニオスの承認申請が全く期待できない以上、国民にエムポックス治療薬を届けるために我々ができることはテコビリマト承認しかない」 厚労省がそう考えたとしても不思議はありません。

個人輸入の以外の道として、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議がありますが、たとえ関係学会が一致団結して要望を出したとしても、ジニオス承認までたどり着く可能性は極めて低いでしょう。

なぜなら、これまたBavarian Nordic自体が製造販売業許可を得ていない=許可を得る気が全くないからです。その背景にあるのが日本の薬価制度や市場規模であれば、株式会社である日本の製薬企業も、採算を無視してまで&株主からの責任追及を覚悟してまで、Bavarian Nordicからジニオスを導入・開発し承認申請する可能性もゼロに等しいと思われます。

二条河原へ
新コロバブルの物語
表紙へ