裁判とお医者様
記事の背景については下記リンク参照
今、滋賀医大の小線源は揺れている
滋賀医大事件記者会見説明要旨
滋賀医大小線源患者会
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【滋賀】「1千人のカルテ不正閲覧」滋賀医大病院の患者会が訴え 朝日新聞2019年1月17日
滋賀医大病院(大津市)で前立腺がんの小線源治療を受けた患者と家族らで作る患者会は16日、泌尿器科教授らが担当医でもなく診療にも関与していない患者のカルテを不正に閲覧していたとして、厚生労働省に調査するよう求めた。

滋賀医大が前立腺がん小線源治療中止、全国の患者に動揺
患者会によると、不正に閲覧されていたのは同大病院で小線源治療を受けた約1千人のカルテ。小線源治療を専門に行う、岡本圭生医師が担当する患者の大半に当たる。治療にあたっていない泌尿器科科長の河内明宏教授ら同科の医師10人が昨年11月2日から28日まで閲覧したという。電子カルテにアクセスした履歴が残っていた。
また、松末吉隆院長が昨年5月から8月にかけて計4回、医療サービス課の事務職員が同年6月から9月にかけて計4回閲覧していたという。
閲覧に気づいた岡本医師が昨年11月29日、個人情報の適切な管理のための措置を義務づけた「独立行政法人等個人情報保護法」に違反するとして、滋賀医大の公益通報窓口に通報した。だが、大学からその後通知がないため、岡本医師が今月になって厚労省と患者会に閲覧の事実を伝えた。
患者会代表幹事の安江博さんは「患者と面識もない医師や職員が患者のカルテを閲覧することは人権侵害だ。患者の人権が守られるよう厚労省の指導を期待したい」と話した。要請に対し厚労省の担当者は「調査する」と答えたという。
朝日新聞の取材に対し、滋賀医大は「回答を差し控える」としている。
電子カルテの閲覧をめぐっては、昨年11月に島根県出雲市で女性2人が殺害された事件の被害者1人のカルテが搬送先の島根大病院で247人に閲覧される問題が起きた。同大はそのうち少なくとも96人が業務外だったと発表し、病院長らが謝罪した。
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訴訟が提起されたのが2018年8月.それまでの行動は取り返しがつかないから,どうでもよろしい.しかし,その8月以降の行動は極めて慎重にしなくてはならない.なのに11月になってこんなヘタを打っているようでは,裁判そのものが始まる前に負けたも同然.自分たちの後ろめたさをわざわざ開示した被告に対する裁判官の心証は地に落ちて,二度と回復できない.

そもそも自分たちが普段から大いに蔑んでいる朝日新聞に対し,こんな子供だましのような報道発表してしまうこと自体,危機管理能力欠如の何よりの証拠であり,実際に患者会から,粛々と反論されてしまっている

本事例に見る如く,偉いお医者さんほど喧嘩のやり方を知らない.私が受任している国賠訴訟で,人権派弁護士さんに協力するお医者さんも,例外ではない.「専門医」の印籠を振りかざして自信満々の意見書に,怯える訟務検事が「負けそうです」と私に泣きついてくるのだが,その顔には「総合診療医ってことは→どんな診療科も非専門だってことだろ」との不安が露骨に表れている.

地道な打合せを繰り返し,その都度適切な意見書を示すことによって,そんな検事の,正に「『藁』にもすがる思い」を解消し,「裁判はこうやって勝つんだぜ」と,負けるのが何よりも嫌いな連中の目の前に突きつけてやる時の爽快感は,矯正医官にならなければ決して味わえなかっただろう.あと十年や二十年で,(特に偉い)お医者様達の法的リテラシーが底上げされるとは到底思えないので,退官後は,大学病院や医師会から法務担当特別顧問の依頼が多数寄せられ,死ぬまで飯の種に困ることはないだろう.まあ,それ以前に法務省が私を離さないとは思うが.

法的リテラシー