相手の顔を想像する

先日、あるシンポジウムででたまたま席が近くになった旧知のPMDA審査役とお話しをする機会がありました。虎ノ門33森ビル(旧医薬品医療機器審査センター)で、椅子から立ち上がればどこに誰がいるかすぐわかる職場だったという話になった時、彼女が「あれがFDAと互角に渡り合っていた秘密だったのよ」と言うのを聞いて、なるほどなあと思いました。お互いの仕事をしている姿が見える。常にreviewを受けている誇りと緊張感が旧審査センターにはありました。

お互いの顔を見ようと思えばすぐ見られる職場では、お互いの顔を「想像」しながら仕事をする必要性が生じません。常にreviewを受けて、自分の仕事の質が維持され、向上しているからです。一方、人が増えて、部署間の連絡もなくなると、お互いの顔を「想像」しながら仕事をすることの必要性が見えなくなります。相手の顔を「想像」しなくなる=自分の仕事に対するreviewを意識しなくなることです。自分の仕事に対するreviewを意識しなくなれば、当然仕事の質は落ちます。

相手の顔を想像しながら仕事をしろなんて誰も言わなくなった。そんなこと、SOPに書いてない。SOPに従って仕事をやれば、「間違いない」と思うようになった。何も新霞が関ビルの中だけではありません。臨床現場でも、指導医レベルでもそう信じている人が増えているように感じるのは、私が耄碌したからでしょうか。

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