名医の基準

いろいろな雑誌で,名医紹介,病院ランキングの類の記事が花盛りである.しかし残念ながらどれも自分が載りたいと思うような記事ではない.外来患者の数,ボスのテレビ出演回数,医局員の数,関連病院の数,基礎研究の論文の数といった,おおよそ実際の診療とは関係のないパラメーターを基準にしているから,とんちんかんなランキングしか出来上がらない.選ばれた本人は自分の記事の部分だけを見ていれば悪い気はしないだろうが,隣のページをめくった途端,あの能無しと一緒に”名医”にされちまったのかと思って,なんていい加減な記事なんだと憤慨しているだろう.

およそ医者の腕ぐらい判定しにくいものはない.自動車修理と違って患者一人一人の診療行為はすべて違う.同じ病名に同じ薬を同じ量使っても,ある人には劇的に効いて,ある人には副作用だけが強く出るなんてことはざらにある.誰を相手にしても一定の結果が出せる名医なんてことはあり得ない.ある患者にとっては名医でも,別の患者にとってはヤブどころかコンクリートの堤防としか考えられないなんてことがあるのだ.

私が日本一と確信して疑わない皮膚科医は,現在都内で開業しているが,門前市をなすというわけではない.頑固でぶっきらぼうだから,アトピーのことを過剰に勉強なさっているおかあさんなどとは全くそりが合わず,喧嘩して患者が帰ってしまうなんてこともよくある.外来はすいているから,いつ行ってもすぐ診察してもらえるんで,私にとっては誠にありがたい名医である.

医者選びは,プロ野球のチームや食べ物の好みに似た面があって,いやむしろ,人と人との切実な付き合いだからこそ,相性ってもんがある.人の命を預かる職業の人間が相性なんていい加減なことでは困るですって.うーん,私はあなたみたいな,偏差値がないと不安なお客様が苦手なんですよ.

それでも判定表がどうしても欲しいっていう人のために,おおざっぱな判断基準(内科医だけですが)を作りましたんで,使ってみてください.

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