帯状疱疹のプライマリケア

-特に帯状疱疹後疼痛 (Post herpetic neuralgia PHN)について-

(知り合いの優秀な皮膚科医に聞いてみました)

1.帯状疱疹の際のゾビラックス (acylovir)の使用について:内服と外用のどちらを優先すべきでしょうか?(病期によって使い分けるなんてことはありますか?)

外用はほとんど効果がありません。内服は発症して早ければ効くことがあります。しかし4−5日以上たったものはまず効かないと思います。そもそも発症がいつであるかを決めるのがむずかしい。痛みが出たときか、発疹が出たときか?痛みだけの時は診断ができないので投与が遅れることがおおい。これらのことより、ゾビラックスがよく効いたと思うことは少ない。あと年齢が50歳以下のときは使うことはまれです。三叉神経1枝に病変があり角膜まで及びそうなときなどは別ですが。

2.いつまで続ければいいのでしょうか?中止(治癒)の目安を教えて下さい

内服は1週間以内です。たいていは4−5日でしょう。それぐらいしか意味がないと思います。先ほどもいいましたが、ゾビラックスだけで痛みがなくなることはあまりありません。痛みが消えるまでにはある程度の日数(普通2−4週)がかかるのです。発疹は何もしなくても治癒していきます。瘢痕がのこることもありますが。一番問題なことは帯状疱疹後疼痛です。現在この何ヶ月も続く痛みに対する治療法はありません。これにはすべての皮膚科専門医が悩んでいるはずです。アモキサン、トリプタノールなどありますが、あまり効きません。早期にゾビラックスを投与しても帯状疱疹後疼痛は防げないとされています。もうひとつ注意することは、透析患者の場合なるべくゾビラックスは使用しないほうがよい。痙攣などの神経症状が高頻度におこります。わたしもその投与量を減量したにもかかわらず、2度ほど起こしてしまいました。

3.内服と外用の併用は保険で認められるのでしょうか?

認められないと思います。外用はフェナゾールなどの非ステロイド系の外用剤を使っておくほうがよいと思います。帯状疱疹は治療がなかなか難しい疾患です。ゾビラックスより効く薬の出現が望まれます。

4.帯状疱疹後疼痛のリスクの高い患者集団というのはありますか?(性別,年齢,基礎 疾患など)

一番重要なのは年齢です。60歳以上はおこす確率が高くなります。しかし高いといっても100人いて1−2人ぐらいです。

5.もし,麻酔科医(ペインクリニック)にすぐ紹介できるような状況にあれば,帯状疱疹の患者はすべて発症早期から紹介するべきでしょうか?

私は必要ないと思います。理由は第一に帯状疱疹後疼痛(PHN)の頻度がきわめてまれなこと。第二に麻酔科が硬膜外とかをしても、最終的には痛みが消えることはないと思う。すなわちPHNになるものはなるということです。麻酔科の医者はそうでない、と言うかもしれないが、現実にはそうなのである。ただ初期の(発症後1−2週)強い痛みについては麻酔科に相談するのもよいと思う。

PHNの報告についてはきちんとしたコントロールがとれないので、統計学的にどうのこうの言えることは、まずないのが実際です。痛みというのは感覚的なものであるゆえに難しい。

英語でもいい人はこちら→Australian Herpes Management Forum

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