おいたわしや、FDA:諮問委員を馬鹿にした誘導尋問に対し怒りの鉄拳(と思いきや・・・・)
Reviewer Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love Aducanumab
検察側証人に対する検察官からの質問もかくや。「舐めるんじゃねえ!」との怒号さえ飛び交わなかったものの(いや、もしかしたら飛んだかも)、どこかの有識者会議の先生方と同様、内心、委員達の腸は煮えくり返っていたに違いない。もしかしたら、これは諮問委員達をわざと怒らせて駄目出し出させるために作成されたそう勘ぐりたく考えたくなるほど最高に挑発的な誘導尋問リストに違いない。そうでなければこんな馬鹿げた質問リストは作れない。これはぼろぼろの承認申請データパッケージを諮問委員会に却下してもらうため、FDAが仕組んだ狂言だったのだ。(bold赤字は池田)
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FDA諮問委員会、バイオジェン/エーザイのaducanumabの承認に否定的 (欧米の新薬開発動向 第972回 2020年11月8日より抜粋)
FDAは末梢中枢神経系薬諮問委員会を招集し、、バイオジェン/エーザイがアルツハイマー病薬として承認申請したBIIB037(aducanumab)について、意見を求めた。事前に公表されたブリーフィング資料のトーンが異常に肯定的だったため驚いたが、諮問委員会の判定は常識的で、エビデンス不足と結論した。

FDAの承認審査は徹底しており、広く信頼されている。諮問委員会がFDAの分析を受け入れないことも無いではないが、今回のように、FDAの評価を殆ど誰も支持しなかったのは私の20年余の経験では初めてだ。サレプタ・セラピューティックス(Nasdaq: SRPT)のデュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬Exondys 51(eteplirsen)の承認や、一部のCOVID-19用薬のEUA(非常時使用認可)など、近年はFDAの判断を批判する声が増えており、FDAに対する信頼は過去のエピソードになってしまった。
(中略→厚化粧を超えた変装のプロセスは知りたい方は元記事を御覧あれ)
aducanumabについて記述する時は『意外なことに』を多用せざるを得ないが、FDAの統計学的評価担当者は、承認審査担当者と異なる結論だった。無益性判定後に行われた解析は厳格性がなく、累積投与量などに関する事後的サブグループ分析は信用すべきでないという、至極尤もなものだった。

承認審査担当者は、諮問委員会から肯定的な意見を引き出すべく、バイアスを盛り込んだ質問リストを作成したが、評決は散々だった。
池田注:『第4問は一番後ろだから、諮問委員のバカどもは第1問との矛盾には気づかないだろうって!?』

第1問:302試験は効果を支持する強力なエビデンスを提供しているか?301試験は無視して判断せよ。
回答:Yes 1名、No 8名、棄権2名
第2問:103試験は補助的なエビデンスを提供しているか?
回答:Yes 0名、No 7名、棄権4名
第3問:アルツハイマー病の病理における薬理学的効果に関する強力なエビデンスが提示されているか?←これ、サイコー\(^ ^)/
回答:Yes 5名、No 0名棄権6名
第4問:301試験の事後的探索的解析結果も考慮した上で、302試験を有効性に関する主要なエビデンスと見なすことは合理的か?
回答:Yes 0名、No10名、棄権1名

第3問はYesが多かったが、アミロイド・ベータなどバイオマーカーが改善する効果は確認されているので、むしろ、少なかったと解釈すべき。棄権6名は、バイオマーカーが改善しても臨床的効用があるとは限らないのだから、こんな質問には答えたくないと考えたのかもしれない。FDAの諮問委員会は特定の事項に関して専門家の意見を聞くものであり、FDAが承認するかどうかは別問題だ。それでも、これだけの反対を押し切って承認するのは容易ではないだろう。
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株価と科学の関係
Eteplirsen続報
Emergency Use Authorizations During the COVID-19 Pandemic. Lessons From Hydroxychloroquine for Vaccine Authorization and Approval. JAMA. 2020;324(13):1282-1283
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