「自由薬価制度」というデマ

You see, Shkreli committed an unforgivable sin in this country. He stole from the wealthy.
"The people who badly needed treatment and were forced to pay money whether they had it or not, isn't that type of price gouging a form of theft?" you might ask.
Oh, no, that's called business. (Erik Sherman, Forbes, Mar 9, 2018)

『米国は「自由薬価制度」だから,こういう問題が起こるのだ』という人がいる.無知か嘘つきのどちらかだ.米国では製薬企業が薬価を自由に決められるだと?それは真っ赤な嘘だ.確かにマーティン・シュクレリは自由に薬価を決めた.彼は果敢にも米国の「硬直した」薬価制度に挑戦したたのだ.その結果,彼はブタ箱行きになった.「米国では自由薬価制度」がデマである何よりの証拠だ.

なぜシュクレリがブタ箱行きになったのかという理由を考えれば,米国の薬価が高いことも容易に理解できる.彼が会社を「私物化」せず,株主や投資家のご機嫌を損ねさえしなければ,他の製薬企業の社長と同じく,敏腕経営者として「それなりの」収入を得て娑婆を大いに楽しむことができただろうに.
人民の敵No.1は実は鼠小僧だった?-米国薬価制度の意味-
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米国の薬価上昇は一部製品で顕著に 医薬経済2019/8/15

トランプ政権が処方箋薬の値上げ抑制にさまざまな圧力ーをかけ続けている。だが、19年上半期だけですでに3400品目薬価が値上げされていたことが最新のレポートで明らかになった。この数字は18年同期をはるかに上回り、歯止めがかかっていない。調査は医療保険と事業主を対象にコンサルティングサービスを提供するRxセービングソリューションズによるものだ。18年上半期(1〜6月)は2900品目の薬価が上昇したが、19年上半期は17%増の3400品目になったと分析した。

3400品目の平均値上げ率は10.5%で、米国物価上昇率の約5倍となっている。値上げ率が100%以上となった製品は41品目に上り、抗うつ剤「プロザック」のジェネリック「フルオキセチン」は879%も上昇した。外用ステロイド剤「モメタゾン0.1%」は381%増、鎮痛剤「プロメタジン/コデイン」は326%増、ADHD治療薬「グアンファシン」は118%増となった。

政治家や消費者には、薬価が賃金上昇率や物価上昇率をはるかに超えた上昇率となってしまったことに強い危機感がある。今年初めにカイザー・ファミリー基金が実施した調査では、米国人の8割が薬価水準を「理不尽」と考えているとの結果が出ている。同調査では、患者の3割が、薬価の問題から必要な処方薬の使用を控えているという結果も出ていた。インスリンの薬価の高騰は最も注目を浴びた問題だ。インスリンの開発から100年以上経過しているが、過去5年で薬価は倍以上となった。インスリンの急激な値上げは糖尿病患者の生活を逼迫、インスリン投与を控える患者も現れた。イーライリリーは同社のインスリン製品のひとつを半額にするなどの対応策を表明したが、インスリン販売メーカーは議会に召喚され、インスリン高騰の原因を尋問される事態となった。

Rxセービングは米国の政治状況や企業への聞き取りを総合し、今年後半もさらなる値上げが続くと予想。消費者にとっては厳しい事態になるとの見方を示す。
18年5月、トランプ大統領は「数週間以内に製薬企業によって大幅な薬価引き下げ案が発表されるだろう」と演説したが実現しなかった。また、薬価引き上げを続けているファイザーを名指しで批判したが、18年の一定期間のみ値上げを控えただけで、今年1月には多く製品で薬価引き上げを再開した。

そこでトランプ大統領は、すべての処方箋薬のテレビ広告には薬価を提示することを義務付けることを決めた。ただ、Rxセービングのアナリストは政府の取り組みについて、「企業への単なる値下げ要請や、公の場での脅し戦略で、薬価の高騰は改善しない」と冷ややかに見ている。実際、製薬企業や保険会社、薬剤給付会管理社、薬局がそれぞれ値引きやリベートを駆使しても、患者が手に入りやすい薬価にはなっていない。Rxセービングは製薬企業が値上げをやめない背景には、「株主や投資家からの圧力と、需要があっても価格が下落しないという市場の非弾力性がある」と分析した。
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