これが医師向け(?)デマの作成術
−驚くほど単純だった改竄の手口−
一口にデマと言っても、その巧妙さ・騙しの威力は千差万別です。「コロナワクチンはバルタン星人による人類絶滅の陰謀だ」と街頭で叫んでも嘲笑さえも恵んでもらえません。ところが、この種の箸にも棒にもかからない陰謀論に限ってごみナビは迅速に反応し、各種SNSに消去命令を出します。感度を際限なく高くして仕事をしているように装う一方で、特異度を実質的にゼロにしてワクチンの有用性を説くでっち上げは、垂れ流されるままに放置する。一方医療従事者に限定されたサイトに掲載されるデマには、一般市民向けデマとは異なった細工が施されています(と言っても驚くほど単純なものですが)。今回はそのようなデマの典型例を御紹介します。

COVID-19の急拡大に直面する東欧諸国 低いワクチン接種率の原因は?対策のポイントは「信頼」(*) 市川 衛 オピニオン m3 2021年11月4日 (木) 配信 より抜粋 (*m3は医療従事者ならば無料登録で全文を読めます)
今、東欧でコロナによる医療崩壊が進行しています。執筆時最新データ(11月3日時点)では、東欧諸国の多くでCOVID-19による死者が急増しており、特にルーマニア・ブルガリアでは過去最大レベルの死者数を記録しています。実はイギリスでも、同レベルの感染者が日々確認されていますが、死者はこの2国と比べ大幅に少ない範囲にとどまっています。(図をクリックして拡大
 背景として指摘されるのが、ワクチン接種率の低さで す。Our World in Dataで確認できる最新のデータで比較すると、少なくとも新型コロナワクチンを1回接種した人の割合は、EU平均の人口の66%と比べ、ルーマニアでは 28%、ブルガリアでは16%にすぎません(なお、ブルガリアのデータは9月16日以降確認できなくなっているので、その時点の数字で比較しています)。ワクチン接種率の高いイギリスが死亡率はそれほど上昇しておらず、東欧において急増している要素の一つとして、ワクチン接種率を考えるのは自然なことと言えます。(図をクリックして拡大)(中略)
今回のまとめ
・東欧において、ワクチン接種率が低い状態が続き、COVID-19による死者が急増している。
・ソーシャルメディアをニュースソースとして選択する人は、伝統的メディアを選択する人と比べてワクチン接種へのためらいを覚えるケースが多い。
・ソーシャルメディアは予防接種への行動に影響を与えるが、それとともに、政府や医療機関への「信頼感」も大きな要素となっている。

市民向けデマ
上記記事の表現は慎重ですが、要は、いくらワクチンの在庫があっても、市民が懐疑論に凝り固まっている限り、死人が増えるだけだ、命が惜しかったらつべこべ言わずに有り難いワクチンを受けろ、と恫喝しています。ワクチンに関するデマは2種類に大別されます。
    官僚による報道発表(役人はこうして嘘をつく)や、読売新聞記事(歴史的デマの教え)は、それぞれ厚労省の、あるいは大阪府のデータを改竄・捏造して重症者/死亡者抑制効果をでっち上げたもので(*)、得られた結果を見ればそれと直ぐ分かります。これらは新聞・テレビにに依存する高齢者向けです。(*元となったデータそのものは公開されていません)

驚くほど単純だった改竄の手口→都合の悪いデータを隠しただけ
一方、市川 衛氏による上記の記事は、全世界に公開され利用されているOur Wold in Data Coronavirus Pandemic (COVID-19)にあるデータを示して、あたかもワクチンに死亡者抑制効果があるかのような記事に仕上げています。医療従事者向けの媒体、データ元の素性、書き手の素性と経歴から言って、記事の信頼性は十分に担保されている。そう考えて「素晴らしい記事が出た」と吹聴する人は、医師の中でもまだまだ多数派ではないでしょうか?しかし、市川氏のでっち上げ手口は、呆れて物が言えなくなるほど単純なものでした。でっち上げに邪魔なデータを隠せばよかったのです。
    右の図(クリックして拡大)は,市川氏が上の図で提示した国々の中からルーマニア(2回目接種率27%),ロシア(同28%),そしてアルバニア(同25%)の3国における死亡者数の経過を示したものです。市川氏はこの中で3国の中でワクチンがその有効性を発揮できる2回目接種率が最も低いアルバニアの死亡率だけを隠しました。
   
都合の悪いものは全て隠蔽
    接種率世界一の明るい北朝鮮における感染爆発、そして死者の激増についても散々説明しましたので(インドネシアとシンガポールにおける感染爆発)、もう十分とおっしゃる方も多々いらっしゃると思うのですが、この種のデマが後を絶ちませんし、特に今回はワクチン真理教に毒されたお医者様向けのデマなので、執筆者に引導を渡しておくためにも、彼が隠蔽した別のデータも提示しておきます(をクリックして拡大)。お示しした通り、ワクチン接種率と死者数の動きとは何の関係もありません。どのデータをどこをどう操作し、提示の仕方をどう細工しても、ワクチンに死亡率低下効果は期待できないという厳然たる事実はひっくり返せないのです。
 この記事は読売新聞によるデマ(歴史的デマの教え)の二番煎じに過ぎません。それはもちろん「ワクチンに死亡者抑制効果がある」と主張しているからです(NEJMが示す「重症化抑制効果の嘘」)。リアルワールドの中で最も頑健なデザインのコホート研究でも重症者抑制効果さえ示せなかったのに、死亡者抑制効果が示せるわけがないのです。(何度言わせれば気が済むんだ!!いい加減にしろ、コノヤロー)

ごみナビの十八番:安全・安心偽造の手口
    市川氏とごみナビがどんな関係にあるかは問題ではありません。冒頭に説明したように、箸にも棒にもかからない陰謀論に限ってごみナビは迅速に反応し、各種SNSに消去命令を出す。そうやって感度を際限なく高くして仕事をしているように装う。その一方で、特異度を実質的にゼロにしてワクチンの有用性を説くでっち上げはこの、垂れ流されるままに放置する、いわゆる「風説の流布」。この市川氏の記事が、こうしてごみナビのデマ拡散キャンペーン、ごみナビの十八番である安全・安心の偽造に見事に利用されている。その厳然たる事実が此処にある。それが市川氏とごみナビの関係なんぞどうでもいいと私が考える理由です。

新コロバブルの物語
表紙へ