見切りのタイミング

個々のシーズが海の物とも山の物ともわからないというリスクがある上に、そもそも科学研究が評価されるタイムラインと医薬品として開発するタイミングが全く違うという一般則がある。さらにその違いを予測するツールもないし、ノウハウの蓄積もない。

肥満を治療しうるホルモンに飛びつき、去っていった投資会社の話 Biotoday 2015-09-11
  2012年にその発見がNature誌に報告され、運動すると増えてエネルギー消費を増やすとされる脂肪細胞褐色化ホルモン・イリシン(irisin)に 投資会社Third Rock Venturesが真っ先に飛びつき、すぐに去っていった物語がBloombergで紹介されています。

Third Rock VenturesはEmber Therapeutics社を2011年に設立してイリシンやその他の化合物を権利を買い取りましたが、最近イリシンの権利はハーバード大学に返還され、 Ember社は知的財産をMariel社に渡してラボを閉鎖しました。

イリシン研究の商業化が頓挫するなかでイリシンの存在を疑う研究成 果も発表されましたが、先月Cell Metabolism誌に掲載された研究によるとイリシンは確かに人の血中に存在して運動によって増えるようです。この結果を受けてイリシンの存在を疑っ た研究者はイリシンは確かに存在するようだがイリシンで白色脂肪が褐色脂肪様に振る舞うことはまだ示されていないと言っています。

These Venture Capitalists Bet on a Miracle Fat Pill and Lost / Bloomberg

A PGC1-α-dependent myokine that drives brown-fat-like development of white fat and thermogenesis. Nature. 2012 Jan 11;481(7382):463-8. doi: 10.1038/nature10777.
Beige Adipocytes Are a Distinct Type of Thermogenic Fat Cell in Mouse and Human. Cell. Volume 150, Issue 2, p366-376, 20 July 2012
Detection and Quantitation of Circulating Human Irisin by Tandem Mass Spectrometry. Cell Metabolism. Online Now Articles


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