教育は果てしなく
ーそして青年は荒野を目指す.だってAIは所詮「人工」だものー

1976年7月 日本科学技術情報センター(JICST;現(独)科 学技術振興機構:JST)が文献情報データベースのオンライン情報検索システムであるJOIS(JICST On-line Information System/Service )のサービスを開始.開始当初のJOIS-I は専用の通信回線と専用端末を用いた英字カナ検索,英字カナ出力のシステムだったが,1978 年には公衆電話回線と汎用端末機で検索できるようになった。専用端末での漢字出力は 1979 年には実現したが,公衆回線での漢字出力は 1981 年の JOIS-II によって実現。
1988年 NLMがMEDLINEのCD-ROM版の販売許可.MEDLINEのデータ更新が月2度に強化された
1997年 NLMはMEDLINEのウェブ上での検索を無料にすると発表.NCBIがPubMedを公開.
参考:青木仕 Index Medicus, MEDLINE, MeSH の変遷とその歴史 医学図書館 1999; 46(3): 287-295.

「図書館でIndex Medicusを書棚から取り出して・・・」という昔話なんか,もう誰も聴きたくない.大学の同窓会でだって,「そんな話しかできないようになっちまったのか.このポンコツ野郎が」と思われるのがオチだ.

一方,今や(まともな)出版社は,文章の盗用だけでなく,画像の使い回しもチェックする.(もう科学論文のねつ造は許さない。画像データの不正を検出するAI)「ネイチャーの投稿原稿に自分の博士論文の画像を盗用しても簡単にはバレなかった(1ヶ月ぐらいは持ったっけ?)」.それが「昔話」として扱われるまで4年とかからなかったなあ.

下記の記事にあるが如く,自然言語処理と資料検索アルゴリズムを学習することによって,コールセンター業務までこなせるほどにAIが実用的になったのだから,エビデンス検索からガイドラインの批判的吟味まで,もう既にAIに任せられるようになっているはずだ.ただ,怠惰な我々がそれを知らないだけだ.

来年あたり,キーワードを入れるだけで,あるいはコーヒー片手にチャットボットとミニブレストするだけで,あなたが意図するメタアナリシスに適した論文を拾い上げ,レファレンスはもちろん,フォレストプロット図まで入った論文の原稿が,カバーレターと推奨ジャーナルと査読者候補のリスト付きで,あなたの手許に届くようになるだろう.

ただしそのまま投稿すれば,当然ながら出版社のAIによって,AIに書かせたものをそのまま投稿してきたと即座に判断され,リジェクトされる.それだけでなく,投稿者は「お尋ね者」として出版社の間で指名手配となる.

だから,来年あなたを待っているのは,AIが書いた(少なくとも当初は箸にも棒にもかからないような)原稿を「こりゃ,初めから自分で書いた方が早かったな」とか,ぶつくさ言いながら全面的に書き直して投稿する仕事である.そんな仕事を繰り返し,AIを懸命に教育しても,AIの性質上,あなたを超えることは決してない.それどころか,AIはあなたの間違いをそのままなぞる

ところが,(まともな)人間の大学院生は,あなたに反論する.そうしてあなたを超えていく.そこがAIと人間の違いである.かくしてどんなにAIが発達しようとも,そのAIを扱うのは人間だから,その人間を教育する仕事はいつまでも無くなることはない.こうして教育は果てしなく続く.青年よ,教授の椅子という名の荒野を目指すのだ!!
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活用広がる製薬企業のAI(下) 問い合わせ対応効率化で他社と差別化 日刊薬業 2018/7/26
 第一三共は今年4月、IBM・ワトソンの自然言語処理技術を基盤とし、アドバンスト・メディア社の音声認識技術を組み合わせたシステムをコールセンターに導入した。背景にあるのは応対品質の確保とともに、来年にも見込まれる抗がん剤新薬の発売だ。同社のコールセンターは利用者からの評価が高い。民間会社によるアンケート調査では、対象となった大手製薬企業10社の中で連続して1位を獲得している。この状態を維持・向上するため毎年、保険薬局から「電話のつながりやすさ」「迅速な回答」「説明の分かりやすさ」などについて意見を聞き、対策を検討してきた。しかし、従来の手法では回答のスピードを上げることが困難と判断。AI活用にかじを切った

 コールセンターの応対実績は、おおむね月1万件で年間約12万件。新製品の発売や効能追加に加え、インフルエンザの流行時には増加する。利用者は42%が保険薬局で、医院19%、病院13%など。職種は7割が薬剤師だ。業務の流れは、オペレーターが問い合わせ内容を確認し電話をいったん保留。知識と経験によってキーワードを決定し、複数の検索結果から最適と思えるQ&Aを探し出し保留を解除して回答する、というもの。

 AIが能力を発揮するのは、このうちの保留時間の部分だ。従来は比較的簡単な質問も含め平均38秒を要していたが、AIによってキーワードの決定や最適な答えの抽出が瞬時にできるようになった。オペレーターの質に左右されることもない。導入からまだ3カ月程度で顧客満足度は測れないが、「迅速化することで、他社との差を実感してもらえるのではないか」(小林典貴・製品情報企画グループ長)と見通している。利用者が途中で電話を切る「放棄呼」が減少するなどの効果も期待できそうだ。

 コールセンターへのAI導入は、製薬企業では同社が初めてとみられる。一般顧客を対象とする業界なら汎用言語モデルで処理できるが、製薬業界では医師や薬剤師による複雑で専門的な用語が使われる。自然言語処理が難しく、他業界に比べ越えるべきハードルが高い。第一三共はこれまで蓄積してきたノウハウを集約して今回の実装につなげた。

医療関係者向けにチャットボット  沢井製薬

 沢井製薬は今年2月初め、AIの活用により対話型のコミュニケーションができるプログラム「チャットボット」を医療関係者向け情報サイトに導入した。同サイトは企業ごとにレイアウトや掲載情報が異なり、欲しい情報を探し出す作業が煩雑という利用者の声に応え、ワンストップで情報が得られる仕組みを整えた。
 例えば薬剤師が薬剤Aを一包化できるか確認したい場合、以前は自ら考えて安定性試験のデータをサイト内から見つけ出す必要があった。チャットボット導入後は、同社のキャラクター「ジェネちゃん」の案内に従って「Aは一包化できるか」と文章を打ち込むと、関連資料がサイト上に表示されるようになった。
(後略)
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