重度知的障害者関連の施設では,利用者に対する虐待,暴行や労働の搾取といった悪事が行われる危険性があります.事実近年いくつかの施設でそういった事例がありました.また,虐待や暴行とまでいかなくても,利用者の保護者が施設の待遇に意見を述べる機会が非常に少ないのが現状です.このような状況を作ったのは次のような理由です.
1.利用者自身が施設運営を監視し,意見を述べることが困難である.待遇に不満があってもその事実を正しく伝えられなかったり,信用してもらえない.
2.施設自体がしばしば家族の住まいから遠いところにあり,保護者が頻繁に施設に行けない.たとえば東京都の重症心身障害者施設は,近年は地価の高騰,地域住民の反対といった原因で,遠く秋田県や山形県に作られています.
3.保護者には自分の子供や肉親を人質に取られているという意識があり,施設の運営に疑問を持っても,それを質せない..
以上のような理由で,利用者およびその保護者と施設の関係では,施設の側が”面倒を見てやっている”という,”お上”の立場であり,サービスを受ける側と提供する側という対等な契約関係ではなくなっています.
このような状況を改善するために,監督官庁ばかりでなく,保護者や第三者機関による定期的な運営監視が必要です.