知らしむべからず

私が勤務するコロニー嵐山郷は,典型的な”お上”の体質を持っています.例えば,施設の運営上,利用者の所属寮棟の編成替えの必要が生じた時でも,編成替えが決定した後で保護者に報告するだけです.早めに保護者に相談して協議しようという態度は見られません.事前に協議すると混乱を招くからという理由なんだそうですが,これは知らしむべからずという,お上の態度そのものです.

私の施設は県が100%出資する公的施設ですから,納税者は我々への出資者です.その上に措置費(利用者が施設を使う代金)を払っている保護者はその出資者の中の利益代表です.つまり,利用者の保護者は,株主とお客さんが一体となった,非常に大きな力を持った存在のはずです.彼らは施設の運営に関与する権利があります.しかし,現実には保護者が施設運営に口出しできる,株主総会のような公式機関がありません.辛うじて親の会という組織がありますが,これは保護者同士の親睦会の色合いが強く,親の会の決議は,施設に対して法的な拘束力を持ちません.

サービスの受益者と提供者の契約関係をはっきりさせ,両者を対等の立場に置くことが必要です.そのためには,サービスの受益者がサービスの内容を調査して,不満があるときはサービスの提供者に対して改善を要求する公式なルートを作ることが必要です.

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