Scott Gottliebの突然の辞任

The praise was something of a surprise, given the criticism Gottlieb that faced when he was nominated for the job in 2017. He was then seen as a friend of the pharmaceutical, biotech, and medical device industries.(BMJ)
就任当初は経済界・企業との結びつきの強さを懸念されたゴットリーブ長官だが,電子タバコ・メンソールタバコに対する規制強化,オピオイド依存症対策といった面で新機軸を打ち出して高い評価を受けていただけに,米国内でも誰も予想していなかったようだ.

I’m leaving because I need to spend time with my family. I get home late Friday, work on weekends and come back to Washington on Sunday. I did the job 100 percent. (Washington Post)
突然の辞任はしばしば様々な憶測を呼ぶ.かつて患ったホジキンリンパ腫の再発は極めて考えにくいとすると(本当にそうなら本人が率直にそう説明するだろう),ワシントンDCから500kmも離れたバッファローの自宅に金曜の夜遅く帰り,週末も仕事をして日曜の夜にオフィスに帰るという,「海の男の艦隊勤務」さながらの生活に疲れたという理由をそのまま素直に受け取りたいところだ.

”…Scott has helped us to lower drug prices, get a record number of generic drugs approved and onto the market, and so many other things. He and his talents will be greatly missed!”
しかし,それでもなお気になることがある.彼の周囲が彼の業績を称える一方で,例によって,肝心の「社長」は,ゴットリーブが苦労した公衆衛生政策を全く理解せず,この期に及んでも,ただ,「記録的な数の後発品を承認して薬価を下げた」ことだけを評価し,肝心要の公衆衛生政策や画期的新薬・医療機器の承認については「other things」で片付けてしまった.

私なら「ゾロをどんどん承認して薬価を下げるなんて,何も俺じゃなくたってできることじゃねえか.こんなバカの下で働くのは,もう真っ平御免だ」と思う.ゴットリープが同じように思っているかどうかは誰にもわからない.しかし,彼のやったことは,それ相応の覚悟と誇りを必要としたことだけは確かだ.

FDA Gottlieb長官が突然辞任 ミクスオンライン 2019/3/8
米国「FDA長官辞任」は日本の「タバコ対策」に影響を及ぼしかねない(石田雅彦 Yahoo! ニュース 2019/3/6)
Tanne JH. Scott Gottlieb resigns as head of FDA. BMJ 2019;364:l1086
FDA Commissioner Gottlieb, who raised alarms about teen vaping, resigns. Washington Post March 5 2019

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