医学生をICHに!

お医者さん、中でも大学のお医者さん達の大部分は、臨床開発も規制も何も知らない。だからまともな臨床研究一つできない。とまあ、そういうことになっています。

そして、その現状をどうやれば改善できるかという議論になると、旧態依然のカリキュラムの中に臨床試験・臨床研究が欠落している(だから文科省が悪い)、教官の中に臨床試験・臨床研究を教えられる人材がいない・講座もない(だから大学が悪い)、医療崩壊で臨床試験・臨床研究を勉強する余裕がない(だから厚労省が悪い)、臨床試験・臨床研究を勉強しようとしない医者が悪い ひいては「欧米のように」できない日本人全員が馬鹿だ というように、十年一日の如く、悪者探しの暇つぶし議論が繰り返されます。そうやって悪者探しをする人達の頭の中から欠落しているのが、「(役所に依存せずに)自分達は何ができるか?」という視点です。

大学の医者は、臨床開発も規制も何も知らない と非難する人達も、かつては、臨床開発も規制も何も知らない時代があったはずです。その人達はどうやって育ってきたのか?臨床開発や規制が学べる、恵まれた環境にあったはずです。だったら、大学のお医者さん達がそういう環境に出入りしやすいようにしてあげることから始めたらどうでしょう。

大学に臨床開発・規制の教育リソースがないというのなら、産官が持っているリソースを抱え込まずに、大学のために使えばいいだけです。

たとえば、ICH。ああいう会合にobserverでいいから、大学のお医者さん達にどんどん参加してもらえばいい。ICHに大学のお医者さんが参加して都合の悪いことは何もありません。現にGHTFはアカデミアにもopenです。

私は、2003年に旧審査センターに入り、初めてICHに参加した時に、こんなにも多くの人が開発と規制について真剣に話し合っていることを知って、学会参加とは決定的に異なる新鮮な感動を覚えました。臨床医が規制に関わることの意義が理解できました。

ICHが駄目なら(別に駄目とは思えませんが)、DIAでもいい。アカデミアの参加費をもっともっと安くして。そうやって、大学のお医者さん達を育てていかないと、産官双方とも、アカデミア相手に苦労することの繰り返しの歴史が今後も延々と続くでしょう。

何も医者に限る必要はありません。Early Clinical Exposureと言います。医学生にICHやGHTFにどんどん参加してもらえばいいんです。若い人ほど強烈な印象を受けます。その成果は五年後、十年後、二十年後に確実に返ってくる。

人材育成のために、小学生を大学病院に呼んでお医者さんごっこをやってもらう時代です。大学生がICHに参加して何が悪い!

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