見捨てられたフェブリク

フェブキソスタットの再審査期間は2019年1月20日に終了するから、その後発品は、2019年2月申請〜2020年2月承認〜2020年6月薬価収載と考えられる(参考記事)。したがって,この記事を書いている2018年6月現在(*1),先発企業はまだまだフェブキソスタットを大切にしなければならないはずである.しかし,既に見捨てられたようだ.というのは,今から3ヶ月ほど前にNEJMで公開されたフェブキソスタットの心血管系に関する重大な安全性情報(心血管死:HR1.34 [95% CI, 1.03 to 1.73],全死亡:HR1.22 [95% CI, 1.01 to 1.47])に対し,肝心のフェブキソスタットを開発した企業は今日までは完全黙秘を保っているからだ.いや,完全黙秘どころか,NEJMでの公開(Epub 2018 Mar 12)後間もなく,お目出度い授賞式の報道発表をぶつけている.

*1 2018年9月7日付けで2021年1月20日までの2年間の再審査期間延長が決まった.(高尿酸血症・痛風治療剤「フェブリクⓇ」再審査期間延長の通知発出について
*2 FDAは黒枠警告をつけた:米国では,下記のように成人での効能効果が制限されたばかりでなく,黒枠警告まで出る事態に至っている.このような状況下で,敢えて小児の開発を強行するのは倫理的に重大な問題ではないのか?私が保護者だったら,アロプリノールよりも安全性に劣るような薬の治験に自分の子供を参加させるようなことは絶対にしない.

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厚労省もフェブリクの心血管疾患リスクを注意喚起へ ミクスオンライン2019/06/27
厚生労働省の薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会は6月26日、帝人ファーマの高尿酸血症治療薬・フェブリク錠(一般名:フェブキソスタット)について、添付文書の重要な基本的注意で、心血管疾患発現の注意喚起を行う方針を了承した。FDAが19年2月、添付文書に心血管死に関する注意喚起を記載する指示した動きなどを受けたもの。厚労省では、同剤の注意喚起に関する通知を7月中にも発出し、周知を図る考え。

同剤は2011年1月、痛風、高尿酸血症、がん化学療法に伴う高尿酸血症を効能・効果に、帝人ファーマが承認を取得している。同日の調査会は、同剤について、FDAが添付文書の改訂を指示したことや、19年5月に特定使用成績調査の結果が提出されたことを踏まえて開かれた。検討の結果、今後の対応については、添付文書の重要な基本的注意で、心血管疾患の発現を注意喚起する方針を了承した。同剤の位置づけについては、FDAが添付文書の改訂を指示した根拠となる試験は、一般的に心血管系リスクが欧米人と比較して低いとされる、アジア人のデータが少ないことなどから、適用患者を限定するなど変更の必要はないと判断した。一方、同試験では心血管死という重篤な事象が認められたことから、添付文書のその他の注意では、試験結果の情報を記載する。また厚労省では、日本人に関する情報収集や評価を行うため、「MID-NET」などの医療情報データベースを活用した調査を検討する。
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武田薬品 痛風薬Uloricの米国での用途がアロプリノールの控えへと制限された BioTodayニュースレター 2019年2月25日
武田薬品のキサンチン酸化酵素阻害剤Uloric(febuxostat) は別の痛風薬allopurinol(アロプリノール)に比べて死亡率が高いとFDAが判断し、米国でのUloric承認用途がアロプリノール無効か不向きな患者への使用に制限されました。また、心血管疾患(CVD)を有する痛風患者はアロプリノールに比べてCVDによる死亡率が高いとの強調警告(Boxed Warning)表示がUloricに新たに加わっています。2009年に米国で承認されたUloricの去年2018年12月末までの9か月間の売り上げは405億円であり、前年同期の売り上げ350億円を15.7%上回りました。その売り上げのほぼ全て(397億円)は米国からのものであり、今回の用途制限は同剤の売り上げの足かせとなる恐れがあります。
[Uloricの去年3Qまでの売り上げ] FY2018 Q3 Data Book
ULORIC Prescribing Information including boxed warning and medication guide
Takeda gout drug Uloric loses first-line approval after FDA confirms death risks
FDA adds Boxed Warning for increased risk of death with gout medicine Uloric (febuxostat)
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また,フェブリクはアロプリノールよりも,痛風の発現割合が高い!!(*) これは秘密のデータでも何でもない.フェブリクの添付文書に明記されている,帝人ファーマが行った臨床試験データなのだ!!

表8 痛風関節炎の発現割合

投与群 0〜12日以下 12日超
6週以下 
6週超
8週以下 
アロプリノール200mg/日(121例) 1.7%(100mg/日) 3.3%(200mg/日) 0.9%(200mg/日) 
フェブリク40mg/日(122例) 1.6%(10mg/日) 5.7%(40mg/日) 3.3%(40mg/日) 
帝人ファーマ社内報告:アロプリノール対照無作為化二重盲検比較試験(痛風を含む高尿酸血症患者), 2010
*尿酸を低下させる薬で痛風発作が起きることはよく知られているが,その機序は不明である.

参考:
FREED研究に学ぶ
高価な新薬が安い従来薬に敗れた日:高尿酸血症治療薬フェブキソスタットの屈辱(2018/5/2)
ニュルンベルク裁判再び?:FREED研究における重大な研究倫理違反(2019/3/23)
米国心臓病学会(ACC):CV高リスク痛風例へのフェブキソスタットによるCVイベント抑制はアロプリノールに非劣性も、死亡リスクは有意に増加:CARES試験(2018/3/11)
フェブキソスタットの心血管イベントを評価した論文読んでみた(CARES)trial
米英何するものぞ−国粋主義学会によるガラパゴスガイドライン−

「世界的に治療薬の種類が少なかった高尿酸血症・痛風治療の領域において、約40年ぶりの日本発の新薬として世界中に導出され,患者さんに新たな治療選択肢を提供した」 そんな自慢の薬だったはずなのに,再審査期間が終わるのを待たずに,帝人ファーマはフェブリクを見捨て,逃亡したのだ.

なぜなら,もし,帝人ファーマにとって,フェブリクが目の中に入れても痛くないほど可愛いのならば,既に全世界で発表された,心血管死,全死亡の増加リスクを隠蔽するはずがないからだ.逆に帝人ファーマは武田から試験データを全て買い取り,詳細な情報を公開していたはずだ.たとえそこまでできないとしても,NEJM論文をAppendixまで読み込み,詳細に解説した日本語資料を作成し,Webで公開するのが,帝人ファーマにとって最低限のリスク管理だっただろう.仮にも製薬企業ならば,それがフェブリクを守る,そして帝人ファーマ自身を将来の訴訟の嵐(*)から守る唯一の道だと知っていたはずだ.

*この訴訟の嵐は,米国では既に「いまそこにある危機」となっている.アクトスの場合はフランスの後ろ向き疫学調査に過ぎなかった(CNAMTS 試験).それでも,武田は総額27億ドルの引当金により,2015年前期の連結最終損益は従来の650億円の黒字見通しから一転し1450億円の赤字となった。これは武田にとって1949年の上場以来初めての最終赤字である。(武田、米糖尿病薬訴訟で和解 1450億円の最終赤字に 15年3月期 和解金など3241億円引き当て 日経2015/4/29付).ところが今回はFDAの要求により,武田自身が行ったRCTである.後ろ向き疫学調査なんかと比べたら,試験結果の頑健性が桁違いに高く,絶対に言い逃れができない.このままで行くと,武田と一蓮托生の帝人ファーマも,訴訟の嵐から逃亡できないことになる.
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武田薬品の痛風薬Uloric(フェブキソスタット.日本での商品名はフェブリク)の米国販売中止を消費者保護団体がFDAに要求 BioTodayニュースレター 2018年6月22日
死亡リスクが高い武田薬品の痛風薬Uloric(febuxostat)の販売中止を市民団体Public Citizenが米国FDAに求めています。今年3月のN Engl J Med誌掲載試験で同剤の死亡全般や心血管死がアロプリノールに比べてより多いことが示されています。
FDA pressured to revoke Takeda’s popular gout drug Uloric due to death concerns
Citizen Petition
Cardiovascular Safety of Febuxostat or Allopurinol in Patients with Gout. N Engl J Med March 29, 2018
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2019/1/18追記:一方,お膝元の日本では,学会の「条件付き推奨」とのお墨付きさえ出ている.
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腎機能低下抑制に新規尿酸生成抑制薬を推奨  高尿酸血症・痛風治療GL発刊 日刊薬業 2019/1/17
日本痛風・核酸代謝学会は「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」(第3版・GL)を作成、発刊した。新規にクリニカルクエスチョン(CQ)と推奨を設けたのが特徴。尿酸生成抑制薬のフェブキソスタットとトピロキソスタットを新規に記載し、両薬剤が中等度の腎障害を有する高尿酸血症に単独で使用できることや、腎機能低下を抑制する目的で使用することを条件付きで推奨した。GLは2010年以来の改訂となる。前回との大きな変更点として、7課題のCQと推奨を作成したほか、高尿酸血症の新規病型分類、動脈硬化や心不全、小児の高尿酸血症などの項目を新たに追加した。CQでは、臓器保護のために尿酸降下薬を使用するか否かについて、腎障害を有する高尿酸血症患者に対しては「腎機能低下を抑制する目的に尿酸降下薬を用いることを条件付きで推奨する」(エビデンスレベルB)とした。(後略) 参考: 米英何するものぞ−国粋主義学会によるガラパゴスガイドライン−
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