FDAの組織防衛?

二番手戦略が色あせ始めたいま、日本の医薬品審査も早急に非劣勢試験の在り方を精査する必要あり(2010/06 /07 RANKING MAIL 第1438号)

で、FDAが非劣性試験による新薬承認を事実上認めない方針を打ち出したことを伝えています。

国民皆保険制度への対応を考えているのかも知れません。やはり宮田さんのメルマガで、米国では英国のNICEのような機能を持った組織を民間ベースで作るという話があったと思いますが、その仕事の少なくとも一部をFDAが先取り&横取りすることを考えている可能性はどうでしょうか?

様々な分野で、自分たちが苦労して世に出した新薬が育った結果、既存治療のエビデンスは時が経つにつれて固まっていくばかりで、プラセボ対照試験で「新薬でございます」と大きな顔ができなくなってきました。企業にとっては何とも皮肉な結果です。一方で企業としても、パイプラインの中身が枯渇する中で、開発の選択と集中が厳しく求められるので中途半端な開発をやっている余裕はありません。今回のFDAの方針も、そのような企業戦略と、国民皆保険制度下での治療モダリティのコストパフォーマンス重視という米国の政策が一致した結果ではないでしょうか。

市販後の規制強化といい、今回の非劣性試験への厳しい態度といい、企業との共存共栄を謳っていた従来のFDAとは正反対の事業方針が次々と打ち出されています。肥大化したFDAが、組織縮小圧力をかわすために、企業の生け贄によって仕事を増やしているように思えて仕方がありません。

(米国)民主党政権でも、財政赤字縮減は急務には違いありません。もともと小さな政府を標榜していますから、縮減対象となる政府機関は限られている。肥大化したFDAは真っ先に標的になりかねない。そんな脅威に対して先手を打って早すぎることはない。ましてやそれが国民の安全を守り、医療費削減につながる活動であれば、誰も反対できないというわけです。

目次へ戻る