ある”申請”

よく読むまなくても、薬事法に基づく承認申請ではないことがよくわかる。薬事法に基づく承認申請ではないからといって、ほっとできないこともわかる。なぜ なら、これはあくまで”研究”であって薬事法に基づく治験ではないからだ。もちろん、治験届けは必要ないし、GCPも関係ない。この”研究”を”検討”す るのは、厚生科学審議会遺伝子治療臨床研究作業部会であって、医薬品医療機器総合機構ではないことも明らかだ。

2006/2/2の日経MedWaveより
 自治 医大、わが国初のパーキンソン病を対象にした遺伝子治療を申請 

 わが国で初めてのパーキンソン病を対象にした遺伝子治療研究の実施計画の申請が行われた。自治医科大学附属病院が行ったもので、2月1日に開催された厚 生科学審議会科学技術部会で公表されたものだ。また、同部会では北里大学病院の前立腺がんを対象にした遺伝子治療臨床研究の実施計画が申請されたことも公 表され、わが国で実施または申請された遺伝子治療研究は21件となった。両計画とも今後、厚生科学審議会遺伝子治療臨床研究作業部会で検討されることにな る。

 自治医科大学附属病院が申請した遺伝子治療研究は、進行したパーキンソン病患者の線条体(被殻)に芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素(AADC)遺伝子を組み 込んだ2型アデノ随伴ウイルスベクターを定位脳手術的に4カ所注入するもの。AADCはL-DOPAをドパミンに変換する酵素であり、治療を受けた患者が 経口投与されたL-DOPAでドパミン産生を促進させ、症状の改善が期待できるものだ。2型アデノ随伴ウイルスは神経細胞への特異性が高いことが明らかに されている。ウイルスベクターの供給元は米Avigen社。対象患者は9症例の予定で、注入するウイルス量は3群を予定している。第1群での注入量 (vector genomes:vg)は1症例あたり3×1011vg、第2群は9×1011vg、第3群は第1群と第2群の安全性評価、治療効果に応じて用量を調整す る予定だ。

 北里大学病院が申請した遺伝子治療研究は、単独治療では治療後に再発する可能性が高い限局性前立腺がん患者に、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ (HSV-tk)遺伝子を導入したアデノウイルスベクターを前立腺に投与するもの。患者はガンシクロビルの全身投与を受け、HSV-tkによってガンシク ロビルが活性化されがん細胞を死滅させる。その後、この治療を反復して行ったあと、根治的前立腺摘除した場合の安全性の確認が試験の主な目的。使用される ベクターはがん原性のないアデノウイルス5型を基に、米Baylor医科大学によって生産される。HSV-tk発現アデノウイルスベクターの投与量は 1010PFU。(横山勇生)

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