左室収縮能の評価(systolic function)
東京大学附属病院検査部 櫻井 進 技師
☆収縮能の評価
☆はじめに
収縮能の評価については、過去にさまざまな指標が考案され検討がなされてきた。
ここでは、収縮能の評価を全体的なものと、局所的なものにわけ解説する。
各種収縮能の指標は前負荷、後負荷、心拍数などの影響をうける。
☆左室全体の収縮能
左室全体の収縮能を評価する方法には、収縮期および拡張期のそれぞれの左室内径・面積・容量を求め
る方法かまたはドプラを用い左室駆出血流速度波形の解析から、収縮能を求める方法がある。
1.左室内径の計測によるもの
a. 左室内径短縮率(%fractional shortening: %FS)。%FS=(Dd-Ds)/Dd×100
b. 左室駆出分画(ejection fraction:EF)。EF=(EDV-ESV)/EDV。Pombo法、Teichholz法。
c. 平均円周短縮速度(mean Vcf)。mean Vcf=(Dd-Ds)/ET×Dd。健常値 0.8-1.2circ/sec。
2.左室面積の計測によるもの
a. 心尖部を含む心室腔を描出しての、area-length法、 truncated ellipsoid法、simpson法による。
b. 心内膜の自動検出。血液と心筋の境界を自動検出しリアルタイムで面積計測を行う。
3.ドプラを用いた血流速波形の解析によるもの
a. 大動脈弁通過血流を用いた指標
・平均加速度:大動脈弁開放時からピークまでの傾き。
・最大加速度:収縮早期の血流速度波形立ち上がりの最大の傾き。
・大動脈弁輪部での”平均血流速度×同部の面積”により1回心拍出量が求められる。
b. 僧帽弁逆流血流を用いた指標
・軽度以下の僧帽弁逆流血流速度波形から、収縮早期の左室内圧変化速度を求め指標とする。
・僧帽弁逆流血流速度が1m/secから3m/secに達するまでの時間を測定する。
・mean d(△P)/dt
= (36-4)/t=32/t 単位は mmHg/sec。1000以上が健常。
4.その他によるもの
a. 視覚的にEF,%FSの推定を行う。
b.僧帽弁E点と心室中隔の間の距離の計測。健常値は1cm以下。左室拡張により心室中隔は前方に動く。
僧帽弁のE点の動きは弁を通過する血流量により変化する。駆出率が低下した患者では、E点と心室中隔が開大する。
c.僧帽弁輪部の運動距離を指標とする。
d.PEP/ET。PEP:pre-ejectin period:QRSのはじめから駆出血流開始まで。
またはQ-IIa間隔からETを引いたもの。ET:駆出時間。
☆左室局所の収縮能
左室局所の収縮能を評価する方法には、断層心エコー図により心室壁を分割し、個々の壁運動異常を検討する方法が一般的である。また、組織ドプラを用い心室壁の動きをカラーで表示し、観察する方法もある。
1.断層心エコー図により心室壁を分割し、個々の壁運動異常の観察によるもの
a. ASE16分割での評価。normo:1, hypo:2, akinesis:3, dyskinesis:4, aneurysm:5
・ 左室壁運動異常のスコア化(wall motion score index:WMSI )。スコア総点数/可視化壁部位。
・健常値 1.0 .WMSIが1.7以上であれば灌流欠損は20%以上である
2.組織ドプラ(カラー)を使った壁運動異常の観察によるもの
a. 断層心エコー図およびカラーM-modeを観察する。
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