dP/dt dP/dtについて( dP/dt)
東大病院検査 櫻井 進技師

☆ dP/dtについて
dP/dtについては左室収縮能、拡張能の指標として多数の書籍に記載がある。
dP/dtの計測dP/dt :僧帽弁逆流を連続波ドプラでとらえ血流波形を得る
連続波ドプラでMR血流波形の1m/secから3m/secになるまでの時間を計測する。
この間の平均的なdP/dtは(36-4)/時間で表され、max dP/dtとよく相関する。
また、同様の計測を等容拡張期で行うと -dP/dtが得られる。文献1参照。
信頼性については関連する要素として、簡易ベルヌーイ式の信頼性、高速血流の
測定上の誤差、入射角の誤差などがあるが、特に注意が必要なのが、入射角度と
最高流速の測定部分です。速度成分は2乗されるため、大きな誤差要因となります。
本来は左室内の圧モニターによる方法が最良であるが、文献2に
カテ法と心エコー検査法の比較があり、その信頼性は良好と記述されている。
有用性について、左室カテを行わず、非侵襲的に左房-左室圧較差すなわち左室収縮・
拡張動態の評価が出来る点で有用である。
落とし穴について、計測に必要な僧帽弁逆流が少量であることが前提である。
他の弁逆流があったり、僧帽弁逆流が多いと誤差を生じる。大動脈弁逆流・僧帽弁
逆流が多いか、大動脈狭窄でも誤差を生じる。
僧帽弁弁口部血流波形からの拡張早期波(E)と心房収縮期波(A)減速時間(DT)
による左室拡張能の評価については、一般的な教科書によく示されている。しかし、
この指標は絶対的なものではなく、左室の内圧・コンプライアンス・収縮性、
右室、心膜、横隔膜などからの影響を受ける。また、僧帽弁逆流の有無や年齢などに
影響を受ける。このため左室拡張末期圧が著明に上昇しているかどうかの指標として
参考程度にする。これに代わり、 肺静脈血流波形の計測がより重要とされている。
すなわち、左房開口部より1-2cm肺側に入ったところの血流をパルスドプラで捉
える方法である。特に心房収縮期の逆行性成分(Rev-A)の時間の計測が重要である。
40cm/sec以上であれば左房圧の上昇が疑われる。
上記の指標のほとんどは、前負荷・後負荷の影響を強く受けるのでこれらの情報も
十分考慮しなければならない。

文献1:「循環器疾患最新の治療'96-97」僧帽弁閉鎖不全症.p118.南江堂
文献2:「心臓病プラクティス1心エコーで診る」ドプラ法で圧を知る.p220.文光堂

上記は1999年1月、電子メールで寄せられた質問で、本人の了解を得て資料として作成・公表したものです。

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