心尖部 左室長軸僧帽弁
<僧帽弁通過血流または逆流血流を観察記録するための断面>
・患者の体位は左半側臥位をとる。
・心尖部(心尖拍動の最強点のやや外側下方または心電図検査におけるV5付近)に探触子を置く。
・ビームを患者の右肩甲骨方向に傾斜させる。
・[心尖部 左室長軸]と同じ断面が心尖部より描出されるように探触子の位置を調整する。
心尖部左室長軸僧帽弁のポイントとして以下の基準点が描出される断面に探触子の位置を合わせる。
・僧帽弁複合体を左右に分割する断面。
・僧帽弁複合体の詳細な観察をする場合では、心尖部からのアプローチで僧帽弁両交連部を同一断面の同一の高さに描出した上で、直交する断面が本断面である。簡略には、[心尖部 左室長軸]より少し反時計方向に回転した断面である。
・左室流入血流が最大面積となる断面で、弁近位部の流入血流方向がビームと一致する。
・サンプルボリュームは開放した左室内の弁開口部直下におく。
・血流速度の計測はパルスウェーブドプラを用いる。
・僧帽弁狭窄例では連続波ドプラによるpressure half time(PHT法)による弁口面積の計測をおこなう。
・洞調律のE<A例では、気がつかないうちにE波ではなく A波のPHTを計測してしまうこともある。
・僧帽弁逆流・逸脱、腱索断裂、疣贅などを詳細にみる時は、2腔、4腔断面でも検索する。
・洞調律例では拡張早期の拡張早期波(E波)と拡張末期の心房収縮期波(A波)の2峰を呈する。
・E波の波高とA波の波高の比率(E/A比)は、若年者では1以上と高く、55〜65歳で1近くになり、それ以上の高齢では1以下となる。
・左室拡張能が異常をきたすと、その程度により各種波形が得られる。極端に低下した状態では、E波は急峻な傾きをもって下降し、E<Aになり偽正常化と呼ばれている。
・高齢であるのにE>Aで、E波の減速時間が短縮している場合には偽正常化を疑う。
・左室流入血流パターンは拡張期の左房圧曲線と左室曲線の両者の作用を受ける。
・収縮性心膜炎ではE波とA波の間に上向きのM波が観察される。
・僧帽弁狭窄症などで弁口面積を求める場合は、安静状態で一定心拍数下で計測することが望ましい。心房細動などの不整脈症例では、2〜3回測定したのち数値を平均するのではなく、実測値を並べて記載するほうが望ましい。