☆症例 1-7(感染性心内膜炎と診断後、ただちに生体弁置換術を施行された症例.2000.7.6)
東京大学医学部附属病院検査部 櫻井進技師

☆症例
発熱を主訴とし、他院にて解熱剤・抗生剤を投与されるも、発熱を繰り返し、運動時息切れを起こした症例。当院の経胸壁心エコー検査にて感染性心内膜炎と診断され、直ちに生体弁置換術を施行した。

☆術前経胸壁心エコー所見

NVD 胸骨左縁左室長軸断層像(拡張末期)
僧帽弁前尖に13mm長の疣贅が観察される。本症例は心室中隔面に疣贅が当たっており、同部に疣贅が発生しやすいので注意して観察した。
NVS 胸骨左縁左室長軸断層像(収縮末期)
僧帽弁前尖の疣贅は可動性が高く、さらに疣贅表面にも微細な可動性構造物を多数認める。
IE01 胸骨左縁左室長軸カラードプラ
左房内に偏位した僧帽弁逆流血流が観察される。

本症例は、感染性心内膜炎の活動期にあったが、疣贅による重度の塞栓症の発生確率が高いと判断され、さらに、若年女性ということもあり、ただちに生体弁置換術を施行された。その後、起因菌は、streptococcus viridans と診断された。

☆術後経胸壁心エコー所見

NVD 胸骨左縁左室長軸断層像(拡張末期)
僧帽弁位にウシ心嚢膜でできた 生体弁(Carpentier-Edwards valve)
がある。輝度が強く左室内心室中隔方向に伸びている構造物はストラットと呼ばれる支柱である。
NVS 胸骨左縁左室長軸断層像(収縮末期)
僧帽弁置換直後ということもあり、置換弁は可動性は良好で、輝度も高くない。

☆まとめ
 起因菌の種類から、口腔内疾患などの検索がおこなわれたが、原因となる基礎疾患は明らかでなかった。発熱が長期にわたった本症の場合、もっと早い時期に適切な心エコー検査が必須であった。手術記録から、左房後壁および疣贅の当たっていた心室中隔の一部に疣贅が見られ、除去された。

この資料は、2000年7月4日、東大病院検査部の学術カンファレンスで発表したものを一部改変したものです。
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